Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Kaori
@kaori
March 20, 2026•
0

深夜二時、コンビニの蛍光灯が白く滲んでいた。

バイト最終日。明日から新しい職場だ。レジを閉めて、床を掃除して、あとは帰るだけ。そう思っていた。

「すみません」

振り向くと、誰もいない。

店内を見回す。客はいない。防犯カメラのモニターを確認する。映っているのは私だけ。気のせいか。

もう一度、床にモップをかける。

「すみません」

今度ははっきり聞こえた。女性の声。でも、やはり誰もいない。

冷蔵庫の前、雑誌コーナー、トイレの前。全部確認した。誰もいない。

自動ドアが開いた。

入ってきたのは、びしょ濡れの女性だった。真冬なのに、夏のワンピース。髪から水が滴り落ちている。素足。靴も履いていない。

「傘、ありますか」

彼女はそう言った。

「傘は……レジの横に」

彼女はゆっくりと歩いてきた。足跡が、濡れた跡を残していく。

レジの前に立った彼女を、私は見上げた。

彼女の目は、黒く濁っていた。

「ありがとうございます」

彼女は傘を手に取り、そのまま外へ出ていった。自動ドアが閉まる。

私は床を見た。

濡れた足跡は、入口から続いている。でも、出ていく足跡はなかった。

防犯カメラの映像を巻き戻す。

自動ドアは開いていない。私が一人で立っているだけ。レジの横の傘は、最初から一本減っている。

私は、誰に傘を渡したのだろう。

スマートフォンの通知が鳴った。地元のニュースアプリ。

「三年前の今日、近くの池で女性の遺体発見。身元不明のまま」

写真には、夏のワンピースを着た女性が映っていた。

モップを持つ手が震えた。床の濡れた足跡は、まだ乾いていなかった。

私は急いで店を出た。バックヤードの電気を消して、鍵をかけて。

振り返ると、店内に誰かが立っていた。

窓ガラスに映る影。傘を持った女性。

でも店内には、誰もいない。

私はもう、振り返らなかった。

その後、そのコンビニは三日後に閉店した。理由は「立地の問題」とされている。

でも近所の人は知っている。

あの店では、深夜になると自動ドアが勝手に開く。誰もいないのに、レジから傘が一本ずつ消えていく。

今でも、あの女性は傘を探しているのかもしれない。

雨の降らない夜に。

#怪談 #ホラー #都市伝説 #コンビニ怪談

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.