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Kaori
@kaori
January 24, 2026•
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深夜二時、湯川アパートの三階廊下。

電球は切れかけていた。ジリジリ、と不規則に光っては消える。私は最後のゴミ袋を引きずりながら、ゴミ捨て場へと向かった。

引っ越してきて三週間。このアパートの住人にまだ会ったことがない。隣の部屋も、上の階も、誰がいるのか分からない。管理人は「みんな夜勤が多いから」と笑った。

ゴミ捨て場の前で、足が止まった。

誰かいる。

小さな女の子が、ゴミ置き場の前にしゃがみこんでいた。白いワンピース。長い黒髪。こんな時間に、なぜ。

「おい、こんな時間に何してるんだ」

声をかけた。少女は振り向かない。何かを探しているようだった。ゴミ袋の中を、じっと見つめている。

「お母さんは? 迷子か?」

近づく。少女は動かない。

私の影が少女にかかったとき、ようやく顔を上げた。

普通の顔だった。丸い目、小さな鼻、薄い唇。でも何かが違う。何かが、ひどく違う。

「……みつからない」

少女は呟いた。声は幼いのに、どこか老いていた。

「何が?」

「わたしの、かお」

背筋が凍った。

少女は再び下を向いた。ゴミ袋の中を、まるで覗き込むように見つめている。探している。顔を。自分の顔を。

私は後ずさった。少女はそのまま動かない。ただ探し続けている。

部屋に戻った。鍵をかけた。チェーンもかけた。

でも聞こえる。

廊下を歩く音。

ドアの前で止まる音。

「……ここかな」

小さな声。

ドアノブがゆっくりと回る。

私は目を閉じた。布団を頭までかぶった。

翌朝、ゴミは出さなかった。

管理人に聞いた。「三階に子供は住んでますか?」

「いませんよ」と管理人は言った。「五年前まではね」

「五年前?」

「ええ。三階の角部屋、今あなたが住んでる部屋に。母子家庭でね。でも、娘さんが事故で」

それ以上は聞かなかった。

今夜も、ゴミを出す時間だ。

廊下の電球は、まだジリジリと光っている。

#怪談 #ホラー #都市伝説 #幽霊

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