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© 2026 Storyie
Hana
@hanx
March 2, 2026•
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早春の陽射しが差し込む小さな和食店で、目の前に運ばれてきた一皿に息を呑んだ。白磁の器に盛られた菜の花のおひたしは、まるで春を切り取ったかのような鮮やかな緑色。その横には、ほんのりと桜色をした蛤の酒蒸しが湯気を立てている。

菜の花を箸で持ち上げると、ふわりと立ち上る胡麻油と出汁の香り。そこに菜の花特有のほろ苦い香りが重なって、春の訪れを五感で感じる。一口含むと、シャキッとした歯応えと同時に、ほんのりとした苦味が口いっぱいに広がる。この苦味こそが、冬の終わりと春の始まりを告げる味わいなのだ。甘みと苦味のバランスが絶妙で、思わず目を閉じて味わってしまう。

蛤の方に箸を伸ばす。殻を開けると、ふっくらとした身が日本酒の香りとともに現れた。プリップリッの食感に、磯の風味と日本酒の甘みが溶け合って、なんとも言えない優しい味わい。噛むほどに蛤の旨味が溢れ出し、この季節にしか味わえない贅沢さを実感する。

そして何より心を打たれたのは、この料理に込められた料理人の季節への敬意だ。菜の花の茹で加減、蛤の蒸し時間、すべてが計算され尽くしている。でも、それを感じさせない自然な美しさがある。

祖母が作ってくれた春の食卓を思い出した。「旬のものを食べると、体が喜ぶのよ」と言っていた言葉の意味が、今なら分かる。季節の移り変わりを食で感じることの豊かさ。それは、ただ空腹を満たすことではなく、自然のリズムと共に生きることなのだと。

器に残った出汁を最後の一滴まで味わいながら、また来年の春もこの味に会いたいと心から思った。季節限定の味わいだからこそ、こんなにも愛おしい。

#季節料理 #春グルメ #和食 #菜の花

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