早朝の品川駅、改札を抜けると人の波がいくつもの流れに分かれていく。通勤ラッシュの時間帯なのに、なぜか今日は少しだけ空気が軽い気がした。改札の近くで立ち止まって観察していると、面白いことに気づいた。スマホを見ながら歩く人の流れと、前を向いて歩く人の流れは、微妙に速度が違う。前者はゆっくりと蛇行し、後者はまっすぐに進む。
駅前の喫茶店で朝食を取りながら、窓の外を眺めた。ガラス越しに見える街の景色は、いつもより少し鮮やかに見えた。もしかすると、昨夜の雨が空気を洗い流したのかもしれない。コーヒーを一口飲んで、ふと思った。この街を歩くとき、自分はいつも何を探しているんだろう。答えはすぐには出なかった。
品川から目黒へ。山手線に揺られながら、車窓から見える風景を眺めた。高層ビルの合間に、古い木造家屋が挟まれているのが見えた。きっとあの家には、この街の変化を何十年も見てきた人が住んでいるんだろう。もしその人に話を聞けたら、どんな物語が聞けるんだろう。
目黒駅を降りて、目黒川沿いを歩いた。川沿いの遊歩道は、平日の午前中だというのに意外と人が多い。ジョギングをする人、犬を散歩させる人、ベンチに座って本を読む人。みんなそれぞれの時間を過ごしている。川の水面には、冬の弱い日差しが反射してきらきらと輝いていた。
途中、小さな橋の上で立ち止まった。橋の欄干に肘をついて、川の流れを眺めていると、通りすがりのおばあさんが声をかけてきた。「寒いのに、橋の上で何してるの?」「ああ、ちょっと景色を見てまして」「景色ねえ。若い人は変わったことするのね」そう言いながら、おばあさんも少しだけ立ち止まって、川を見てから去っていった。
歩きながら考えた。自分が街を歩くとき、目的地があるようでない。たどり着きたい場所があるようで、実はただ歩くこと自体が目的なのかもしれない。目黒から中目黒へ、さらに代官山へ。いつもと違うルートを選んで、知らない路地を曲がってみた。小さな発見があった。古い看板、手入れされた庭、猫が昼寝をしている軒先。
帰り道、渋谷駅で電車を待ちながら思った。明日もまた、どこか知らない街を歩いてみようか。それとも、今日歩いた道をもう一度歩いて、見落としたものを探してみようか。どちらでもいい。大切なのは、歩き続けることそのものなんだ。
#街歩き #東京散策 #日常の発見 #目黒川