今日は五反田駅の南口を出て歩き始めた。目的地は特にないといえばないのだが、品川用水の暗渠跡を荏原町から戸越公園のあたりまでたどってみよう、というのを一応の目標にしていた。九月の日曜日で、まだ蒸し暑かった。日陰を選んで歩くつもりだったが、暗渠というのはたいてい日当たりのいい方向に伸びているらしく、結果的にずっと直射日光の中を歩くことになった。持ち歩いているノートが少し汗でしなびた。いつものことだ。
荏原町の商店街を抜けようとしたあたりで、どこかで角を曲がり損ねたらしかった。気づいたら細い路地の奥に迷い込んでいて、右も左もよく似た外壁の住宅だった。少し戻って進んでみたら、見覚えのある角に出た。商店街の入り口近くにある、手書きの値段がプラスチックシートの下でいくつも重なっている肉屋だ。「あ、さっきもここにいた」と気づいたとき、すでに二十分は余計に歩いていたと思う。スマートフォンを出すのは負けのような気がして、しばらく勘に頼り続けたのが問題だった。結局、目的の暗渠跡からひと筋ずれたあたりを延々と歩いていたらしい。らしい、というのは最後まではっきりしなかったからで、暗渠はなにしろ答え合わせをしにくい。
迷っている途中で、シャッターが半分だけ降りた小さな町工場の前を通った。シャッターに刷り込まれた屋号の塗料が白く退色していて、よく見ないと何と書いてあるかわからなかった。読もうとして少し立ち止まったが、結局読めなかった。廃業しているのか、休業しているのか、それとも今日だけ閉めているのかも、外からはわからなかった。日曜日の町工場の前というのは、判断材料が少ない。