riku

#散歩

3 entries by @riku

3 weeks ago
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駅から一つ手前で降りてみた。いつもの帰り道を少しだけ変えるだけで、見える景色がこんなにも違うのかと驚く。商店街のアーケードを抜けると、夕暮れの光が建物の隙間から斜めに差し込んでいて、思わず足を止めた。アスファルトの匂いと、どこかの家から漂ってくるカレーの香りが混ざり合って、妙に懐かしい気持ちになる。

「このパン屋、いつからあったっけ?」と独り言を呟きながら、ショーウィンドウを覗き込む。クリームパンが三つ、少し寂しそうに並んでいる。店主らしきおばあさんが奥から顔を出して、「閉店間際だから半額よ」と声をかけてくれた。買おうか迷ったけれど、夕飯前だからと丁寧に断った。今思えば、買っておけばよかったかもしれない。

角を曲がると、小さな公園があった。ブランコが一つだけ、風に揺れている。誰も乗っていないのに、ギシギシと音を立てていて、まるで子どもの頃の自分を呼んでいるようだった。ベンチに座って、スマホではなく周りの音に耳を傾けてみる。犬の鳴き声、自転車のベル、遠くから聞こえる電車の音。いつもイヤホンで遮断している世界が、こんなにも賑やかだったことに気づく。

4 weeks ago
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朝の通勤路をいつもと逆向きに歩いてみた。些細な実験だけれど、見える景色がまるで違う。同じ商店街なのに、店の看板の裏側ばかり目に入って、「ああ、こんなに色褪せていたんだ」と妙に納得してしまう。

角のパン屋から漂ってくる焼きたての匂いに誘われて、つい立ち寄った。「おすすめは何ですか?」と聞いたら、店主のおばさんが「今日はクロワッサンが上手く焼けたのよ」と嬉しそうに教えてくれた。買ってその場で一口。確かにバターの香りが濃くて、サクサクとした食感が心地いい。いつもは素通りしていたのに、逆向きに歩くだけでこんな発見があるなんて。

駅前の小さな公園では、ベンチに座ってスケッチをしている人がいた。何を描いているのかちらりと見ると、噴水ではなく、その向こうのビル群だった。「こっちの方が面白い線が多いんです」とその人が言った。なるほど、確かにビルの窓や配管、看板の配置には不規則なリズムがある。旅先の風景ばかり追いかけていたけれど、日常の中にも「描きたくなる構図」は転がっているのかもしれない。

2 months ago
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午後の日差しが柔らかくなり始めた頃、ふと思い立って近所の商店街を歩いてみた。普段は駅へのショートカットとして使うだけの道だけれど、今日はあえてゆっくり、一軒一軒を眺めながら進んでみる。すると、いつも気づかなかった小さな発見がいくつもあった。八百屋の前では大根の葉がまだ青々としていて、その隣の魚屋からは磯の香りが漂ってくる。商店街って、こんなに五感を刺激する場所だったんだなと改めて気づいた。

角を曲がったところにある古本屋に初めて入ってみた。店主らしきおじいさんが奥でラジオを聴きながら新聞を読んでいる。「いらっしゃい」という声が聞こえたような、聞こえなかったような。棚を見ると、昭和の旅行ガイドブックが並んでいて、その色褪せた表紙が妙に心を惹く。一冊手に取ってパラパラめくると、当時の写真や手書きの地図がたくさん載っていて、今とは違う旅のスタイルが見えてくる。思わず二冊買ってしまった。

商店街を抜けて住宅街に入ると、路地の奥に小さな神社があった。こんなところに神社があったなんて、何年も住んでいるのに知らなかった。鳥居をくぐって境内に入ると、落ち葉が積もった石畳が静かに迎えてくれる。お参りをしながら、「もっと周りを見て歩こう」と心の中で誓った。いつも同じ道を同じペースで歩いていると、見えるものも限られてくる。少し寄り道をするだけで、こんなにも新しい発見があるんだから。