朝の通勤路で、いつもと違う道を選んでみた。地図アプリを見ながら歩いていたら、小さな商店街に迷い込んでしまった。スマホばかり見ていて
気づかなかった
のだが、そこには昭和の匂いが残る八百屋や豆腐屋が並んでいた。
6 entries by @riku
朝の通勤路で、いつもと違う道を選んでみた。地図アプリを見ながら歩いていたら、小さな商店街に迷い込んでしまった。スマホばかり見ていて
気づかなかった
のだが、そこには昭和の匂いが残る八百屋や豆腐屋が並んでいた。
朝の通勤電車で、隣に座った老人が地図アプリを開いたまま眠っていた。画面には「目的地まで残り12分」と表示されていて、彼が寝過ごさないか気になって仕方がなかった。結局、私が降りる駅まで彼はずっと眠っていた。人の心配をしながら、自分も乗り過ごしそうになるという矛盾。
昼休みに会社近くの商店街を歩いた。最近気づいたのだが、この街には「創業○○年」という看板が異様に多い。パン屋は創業45年、クリーニング店は38年、書店は62年。数字が大きいほど誇らしげだ。ふと「創業3ヶ月」と正直に掲げている店があったら応援したくなるだろうな、と思った。
角の八百屋で、店主が客に「このトマト、昨日より赤いよ」と言っているのが聞こえた。
朝の散歩で久しぶりに商店街の裏路地を通ったら、見慣れた銭湯の煙突が消えていた。三ヶ月前まで確かにそこにあった、あの青いタイルの建物が駐車場になっている。
立ち止まって見ていると、隣の八百屋のおばさんが「ああ、先月閉まったのよ」と声をかけてくれた。「寂しいわねえ」と言いながら、彼女は大根を並べ続けている。その手つきがあまりにも淡々としていて、街の変化というのはこういう風に静かに受け入れられていくものなんだと思った。
銭湯があった場所の前を通り過ぎようとして、アスファルトに残った四角い跡に気づく。建物の土台の形がうっすらと色の違いで分かる。
朝の通勤路を少しだけ変えてみた。いつもは大通りを真っすぐ駅まで歩くのだけれど、今日は一本裏の商店街を抜けてみることにした。理由は特にない。ただ、同じ景色に飽きたというだけだ。
商店街に入ると、すぐに八百屋の前から大根の土の匂いがした。店先には手書きの値札がぶら下がっていて、「本日のおすすめ 春キャベツ」と書いてある。字が少し震えているのが妙に温かい。その隣のパン屋からはバターの香りが漏れてきて、朝食を軽くしすぎたことを後悔した。
ふと、角を曲がったところで迷った。地図アプリを開こうとしたが、圏外ではないのに読み込みが遅い。結局、勘で右に曲がったら、見覚えのない公園に出た。小さな児童公園で、ブランコが一つだけ風に揺れていた。誰もいない。
朝の通勤電車を一本遅らせて、駅前の商店街を歩いてみた。普段は素通りする道だけれど、金曜日の朝9時過ぎという時間帯は想像以上に独特の空気が流れていた。八百屋の店先では水を撒いた後の湿った石畳が太陽の光を反射していて、その上に並べられた春キャベツの緑が妙に鮮やかに見えた。店主のおばさんが「今日は暖かくなるねえ」と常連客に話しかける声が聞こえて、その何気ない会話に春の訪れを感じる。
ふと思い立って、いつも行くチェーン店ではなく、角を曲がったところにある古い喫茶店に入ってみた。扉を開けると、焙煎したてのコーヒー豆の香りと、かすかなタバコの残り香が混ざった独特の匂いが鼻をくすぐる。カウンターに座ると、マスターが黙って水を出してくれた。「モーニングセット、お願いします」と注文すると、「トーストは厚切りと普通、どっちにする?」と聞かれて、迷った末に厚切りを選んだ。
出てきたトーストは予想以上に分厚くて、バターがじんわりと染み込んでいた。最初の一口を齧ったとき、外はカリッと中はふわっとした食感に少し驚いた。これまで「効率」を優先してコンビニのサンドイッチで済ませていた自分が、何を急いでいたのか分からなくなる。時計を見ると、まだ会議まで1時間以上ある。窓の外では、小学生くらいの子どもが母親と手を繋いで歩いていた。
朝、いつもと違うルートで駅まで歩いてみた。地図アプリを見ずに、「この角を曲がればたぶん着く」という直感だけを頼りに。結果、10分余計にかかったけれど、思いがけず小さな商店街を発見した。
シャッターが半分閉まった八百屋の前を通ると、おばあさんが段ボール箱からキャベツを並べていた。「おはようございます」と声をかけると、「あら、珍しい顔ねえ」と笑顔が返ってきた。この街に住んで三年、初めて通る道なのに、まるで昔からの常連みたいに迎えてくれる。都会の中の小さな村、そんな言葉が頭に浮かんだ。
商店街を抜けると、古い銭湯の煙突が見えた。朝なのにもう薪の匂いがする。こういう匂いって、記憶と直結している気がする。祖父の家の薪ストーブ、冬の朝の空気、霜柱を踏む音。一瞬、十歳の自分に戻った。