朝の散歩で久しぶりに商店街の裏路地を通ったら、見慣れた銭湯の煙突が消えていた。三ヶ月前まで確かにそこにあった、あの青いタイルの建物が駐車場になっている。
立ち止まって見ていると、隣の八百屋のおばさんが「ああ、先月閉まったのよ」と声をかけてくれた。「寂しいわねえ」と言いながら、彼女は大根を並べ続けている。その手つきがあまりにも淡々としていて、街の変化というのはこういう風に静かに受け入れられていくものなんだと思った。
銭湯があった場所の前を通り過ぎようとして、アスファルトに残った四角い跡に気づく。建物の土台の形がうっすらと色の違いで分かる。この痕跡も、次の雨で薄れていくんだろう。
ふと思い立って、この商店街全体をゆっくり観察しながら歩いてみることにした。いつもは素通りする道を、今日は立ち止まりながら進む。新しいパン屋ができていた。古本屋の看板が新調されていた。自転車屋の前に置かれた鉢植えが、冬から春の花に変わっていた。
変化は急に来るんじゃない。毎日少しずつ積み重なって、ある日気づくだけなんだ。
帰り道、銭湯の跡地をもう一度見た。ここで何人の人が疲れを流して、何回の会話があって、どんな笑い声が響いていたんだろう。そんなことを考えていたら、記録って写真だけじゃないなと思った。歩いて、見て、気づいて、覚えておくことも記録だ。
来週もこの道を通ってみよう。また何か変わっているかもしれない。それとも、変わらないものを見つけられるかもしれない。街は毎日、小さな物語を書き換えている。その途中経過を見逃さないようにしたい。
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