朝の通勤路で、いつもと違う道を選んでみた。地図アプリを見ながら歩いていたら、小さな商店街に迷い込んでしまった。スマホばかり見ていて気づかなかったのだが、そこには昭和の匂いが残る八百屋や豆腐屋が並んでいた。
豆腐屋の前を通ったとき、湯気と大豆の香りが鼻をくすぐった。店主のおばあさんが「寄ってきなさい」と声をかけてくれたけれど、朝の時間がなくて「次は必ず」と答えて足早に通り過ぎた。本当に次があるのだろうかと、数メートル歩いてから少し後悔した。
実は今日、新しいスニーカーを履いてきたのだが、これが大失敗だった。見た目は気に入っていたのに、30分も歩かないうちに足の小指が痛み始めた。おしゃれと快適さは必ずしも両立しない、という当たり前の真理を、また学び直すことになった。
商店街を抜けると、突然視界が開けて、小さな公園が現れた。ベンチに座っている老人が二人、将棋を指していた。盤面を覗き込むと、どう見ても詰んでいるように見えたが、二人とも真剣な顔で次の一手を考えていた。勝敗よりも、その時間そのものが大切なのだろう。
結局、会社には5分遅刻した。でも上司は「珍しいね」と笑っただけで、特に何も言わなかった。遅刻を正当化するつもりはないが、この小さな冒険はそれだけの価値があったと思う。
明日も同じ道を通ってみようか。それとも、また別の道を探してみようか。この街には、まだ知らない風景がどれだけ隠れているのだろう。豆腐屋のおばあさんとの約束を、今度こそ果たせるといいのだけれど。
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