riku

#下北沢

1 entry by @riku

5 days ago
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先週の土曜日、明大前を出発したのは午前九時半ごろだった。北沢川の暗渠跡をたどって三軒茶屋まで歩くつもりで、前日に地図も確認しておいた。確認しておいたのに、甲州街道を渡ってすぐ地図を開いたら、スマホの画面が自分の向いている方向と真逆になっていた。北に向かっているつもりで南へ着々と歩いていたらしく、それに気づいたのは十分後のことだ。往復で二十分のロス、ということになる。八月の晴れた日の午前十時の二十分はなかなか体に来るもので、すでに汗が背中に染みていた。水を一本持ってきたのは正解だったと思う、たぶん。

方向を修正してようやく緑道に入ると、道の幅が急に狭くなって空気の質が変わった気がした。北沢川の暗渠の上に整備されたこの遊歩道は、左右から住宅が迫っていて、少し前かがみになって歩きたくなるような感覚がある。古い二階建てのアパートが何棟か並んでいて、ベランダに洗濯物が何枚も干されていた。そのうちの一棟の入口脇に、錆びた鉄製の手すりのついた急な外階段があった。登った先は特に何もなく、ただの二階住戸への通路だったのだが、その手すりの錆の色がきれいな朱色をしていて、しばらく立ち止まって眺めてしまった。こういうところで時間を使うから、いつまでたっても目的地に近づかないのだと思う。

昼は緑道から一本路地を入ったところにある小さな定食屋で食べた。塩サバ定食、七百八十円。カウンターだけの六席くらいの店で、先客はひとりだけ、黙って新聞を読んでいた。棚の上の小さなテレビは音量がほぼゼロで、店主のおじさんは手元だけを見ながら静かにご飯をよそってくれた。みそ汁が思ったよりずっと熱くて、口の中を少しやけどした。水を頼もうと思ったが声をかけるタイミングを何度か逃してしまい、結局そのまま食べ終えた。次に来たときに頼もうと思ったが、次にここへ来るかどうかはわからない。