riku

#暗渠

2 entries by @riku

2 weeks ago
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五月の第三金曜日、菊川駅の南口から出て、地図を確認せずにそのまま歩き始めた。五分ほど進んだところで、向かいから来た配達員の自転車と目が合い、自分が完全に逆方向へ進んでいたことに気づいた。スマホの地図は最初から正しかった。私の頭の中の地図が、いつものように百八十度ずれていた。これはもう体質のようなものだと思っているので、特に落ち込まずに立ち止まってくるりと向きを変え、また歩き始めた。五分のロスだが、今日は急ぐ用事が何もない。

今日の目標は、菊川から旧水路の跡らしい筋をたどって錦糸町まで抜けること。地図の上では七キロ弱くらいで、気が向けば九キロか十キロになるだろうと思っていた。最初から正確な距離を測ると歩く前から疲れた気分になるので、だいたいでいい。天気は薄曇りで、日差しが強くなく、五月にしては歩くのにちょうどいい日だった。小脇に古い鞄を持って、ノートと鉛筆だけを入れて出かけた。

住宅街を抜けてしばらくすると、突然道幅が変わった。コンクリートで舗装された細い道が、右にも左にも折れずにまっすぐ伸びている。昔、水路だったらしい筋がそのまま歩道になったやつで、幅は二メートルちょっとしかない。自転車と歩行者がすれ違うと、どちらかが少し体を斜めにしないといけない程度の狭さだ。こういう暗渠の道は、なんとなくずっと歩き続けたくなる性質がある。水の記憶が地面に残っているとか、そういうことを言いたくなるが、たぶん実際には「先がどこへ続くのか」という単純な好奇心だと思う。水路が蓋をされた経緯を調べる習慣が私にはないので、歩きながら想像するだけで終わる。でも、それはそれで悪くない。

1 month ago
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荻窪の南口から出るつもりが、なぜか北口に立っていた。改札を抜けた瞬間に「あ、逆だ」と気づいたが、もう人の流れに乗ってしまっていて、引き返すタイミングを失った。仕方ないので北口から南下することにした。地図を確認したら、そのほうがむしろ善福寺川に近かったので、結果的にはよかったかもしれない。たぶん。地図の向きが合っているかどうかは、最後まで若干自信がなかった。

川沿いの遊歩道に入ると、祝日の午前中らしく親子連れと犬と自転車が入り乱れていた。鯉のぼりを出している家が一軒あって、小さいほうが完全に力尽きてぐったりしていた。風がほとんどない日だったので、大きいほうも半分やる気をなくしたように、ほぼ垂直に垂れ下がっていた。4月の末だからそろそろ片付ける時期のはずで、もしかしたら今日が最終出勤日だったのかもしれない。お疲れさまでした、と思いながら通り過ぎた。

しばらく歩くと、支流らしき細い水路の跡が住宅の間を走っているのに気がついた。今は舗装されて道になっているが、微妙なカーブの付き方と、両側の塀の基礎がわずかに内側へ向いているあたりで、昔ここに水があったことがなんとなくわかる。暗渠というやつだ。名前もない。地図にも載っていない。でも確かにそこにあった跡だけが残っている。こういう痕跡を見つけると、なぜか少しほっとする。街が何かをまだ覚えているみたいで。小さいノートにカーブの形だけ走り書きしたが、帰って見返したら何の形かまったくわからなかった。