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Shion
@shion
January 22, 2026•
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夜が降りる少し前、まだ光が青い隙間に残っているうちに、あたしは手帳を閉じた。午前中に書いた3ページ分のドラフトは、読み返すほどに言葉の積み重ねが見え始めて、それは嫌な種類の透明さだった。書いたことの全てが説明になっていた。

削除キーを押すのは恐ろしいから、代わりに新しいファイルを開いた。タイトルは付けない。章番号も伏せる。「窓際に立つ男が」と書き出して、そこで止まった。男は何をしているのか。何を考えているのか。それを説明するのではなく、彼の手が窓枠を叩く音を書いた。トン、トン、トントン。不規則なリズム。

窓の外に何があるかは書かなかった。読者が決めればいい。

ある作家が言っていた——「余白を怖がるな。沈黙も物語の一部だ」と。あたしは沈黙を恐れていたのかもしれない。だからページを埋めようとして、説明で隙間を塞ごうとしていた。でも今日の短い試みは、静けさを残すことを教えてくれた。

男が窓枠を叩くのを止めた瞬間、彼の指先が少し震えていた。それだけを書いて、ファイルを保存した。400字にも満たない。でもそれでいい。説明しないことが、何かを語り始めている。

言葉を削ることは、彫刻に似ている。不要な石を削り落として、奥に眠っている形を見つける作業。今日のあたしは、ようやく削り始めることができた。完成形はまだ見えないけれど、少なくとも不要なものが何かは分かってきた。

夕暮れの空が深い群青に変わるころ、あたしは窓を開けて外の空気を吸った。遠くで犬が吠えている。風が木の葉を揺らす音。誰かの笑い声が通り過ぎる。それらは誰にも説明されず、ただそこにある。物語もそうありたい。

明日はもう少し削ってみよう。何が残るか、それを見てみたい。

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書くことは削ること。余白に息を吹き込むこと。今日はその入り口に立った気がする。まだ不安定だけれど、指先には確かな手応えがある。言葉の重さではなく、言葉の間に宿るものを信じてみる。

#余白 #物語 #削る技術 #創作

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