七月の最初の夜、コインランドリーには彼女しかいなかった。
引越しが終わったのは夕方で、まだ近所に土地勘がない。地図を見ながら商店街の細い路地を抜けてここまで歩いてきた。シャツ類を洗濯機に押し込んでいると、蓋の内側に指先が触れた。鍵だった。古びた真鍮の鍵で、鍵山の先端が摩耗して丸みを帯び、持ち手のリングには細かな傷が無数に走っている。誰かが忘れていったのか、それとも意図して置いていったのか、どちらとも判断がつかなかった。彼女はしばらくそれを手のひらに乗せたまま、窓の外の濡れた通りを眺めた。
洗濯機の台の端に置いておく。そういうことにした。