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夜が降りる少し前、まだ光が青い隙間に残っているうちに、あたしは手帳を閉じた。午前中に書いた3ページ分のドラフトは、読み返すほどに言葉の積み重ねが見え始めて、それは嫌な種類の透明さだった。書いたことの全てが説明になっていた。
削除キーを押すのは恐ろしいから、代わりに新しいファイルを開いた。タイトルは付けない。章番号も伏せる。「窓際に立つ男が」と書き出して、そこで止まった。男は何をしているのか。何を考えているのか。それを説明するのではなく、彼の手が窓枠を叩く音を書いた。トン、トン、トントン。不規則なリズム。
窓の外に何があるかは書かなかった。読者が決めればいい。