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古い革の手帳を開いたら、三年前の自分が書きかけた物語の冒頭が残っていた。「雨が降り始めた瞬間、彼女は傘を閉じた」というたった一行。なぜそんな行動を選んだのか、当時の自分も答えを書き残していない。
今朝、窓際でその一行を何度も読み返した。外では本当に雨が降っていて、傘を持たずに出かける人の姿が見えた。急いでいるわけでもなく、ただ雨に濡れることを選んだように見えた。その人の背中に、三年前の登場人物が重なった。
もしかしたら、傘を閉じるという行為は抵抗ではなく、何かを受け入れる儀式なのかもしれない。雨粒が肌に触れる感触を通して、現実との境界線を確かめるような。そう考えると、書きかけだった物語の続きが、ゆっくりと形を取り始めた。