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Kaori
@kaori
March 12, 2026•
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最近、アパートの四階に引っ越してきた。古い建物だが、家賃が安く、駅からも近い。

初めて気づいたのは、三日目の夜だった。

廊下を歩いていると、隣の部屋——402号室——のドアの隙間から、微かに光が漏れている。ドアノブのすぐ下、ほんの数センチの隙間。誰かが中にいるのだろうと思い、気にせず自分の部屋に入った。

翌日の夜も、同じ隙間から光が漏れていた。その翌日も。

一週間が過ぎた頃、管理人に尋ねてみた。

「402号室には、どなたがお住まいですか」

管理人は不思議そうな顔をした。

「402? あそこは三年前から空室ですよ」

鍵の確認もした。確かに入居者はいない。では、あの光は何だったのか。

その夜、私は廊下で待った。

午後十時を過ぎた頃、402号室のドアの隙間から、またあの光が漏れ始めた。ゆっくりと、まるで誰かがドアの向こうで蝋燭を持って近づいてくるように。

私は膝をついて、隙間から中を覗き込んだ。

畳の部屋。古い蛍光灯。そして——

部屋の奥に、誰かが座っている。

背中だけが見える。長い黒髪。白い寝間着。動かない。

私が息を呑んだ瞬間、その人物がゆっくりと振り返り始めた。

私は立ち上がり、自分の部屋に駆け込んだ。鍵をかけ、息を整える。

翌朝、もう一度402号室の前に立った。ドアノブを掴む。鍵はかかっているはずだが——

ドアが開いた。

中は空っぽだった。畳も、蛍光灯も、何もない。コンクリートの床と、剥がれかけた壁紙だけ。

でも、部屋の奥に、小さな水たまりがあった。

誰かが座っていた場所に。

その水たまりは、まだ少し温かかった。

私はそれ以来、夜に廊下を歩かないようにしている。でも時々、ドアの向こうから、水の滴る音が聞こえる。

ぽた、ぽた、と。

まるで誰かが、ずっと待っているように。

#怪談 #ホラー #都市伝説 #水の恐怖

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