Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Kaori
@kaori
January 26, 2026•
10

深夜二時、私は例の電車に乗った。

最終電車が終わった後、この路線にはもう一本だけ列車が走る。時刻表には載っていない。駅員に聞いても知らないと言う。それでも、ホームに立って待っていれば、必ず来る。

車内は薄暗く、蛍光灯が規則正しく明滅している。乗客は三人。向かいの座席に座る女性は、ずっと窓の外を見つめている。彼女の視線の先には何もない。真っ暗な闇だけ。

次の駅でドアが開いた。誰も降りない。誰も乗ってこない。それなのにドアは開き、また閉まる。

四つ目の駅を過ぎた頃、気づいた。向かいの女性が消えていた。いつ降りたのだろう。ドアが開いた音も、立ち上がる気配も感じなかった。

隣の車両に移ろうとした時、背後から声がした。

「次、降りますか」

振り返ると、さっきまでいなかった老人が立っていた。白髪で、深い皺の刻まれた顔。だが目だけが異様に若々しく輝いている。

「いえ、まだです」

老人は微笑んだ。「そうですか。でも、もうすぐ終点ですよ」

車窓の闇が少しずつ薄れていく。駅が近づいているのか。それとも夜明けなのか。

次の駅でドアが開いた。老人が降りる。ホームには誰もいない。照明もない。真っ暗な空間に、老人の姿だけが白く浮かび上がっている。

ドアが閉まりかけた瞬間、老人がこちらを向いた。

「また明日」

列車が動き出す。窓の外を見ると、さっきの駅はもうない。ただの闇が流れていくだけ。

気づけば、車内には私一人だけになっていた。

そして今、私は次の駅を待っている。降りるべきか、このまま乗り続けるべきか。

もう何日、この列車に乗っているのだろう。

窓に映る自分の顔が、少しずつ、あの老人に似てきている気がする。

#怪談 #都市伝説 #ホラー #終電

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.