午前中、ギャラリーの白い壁に映り込む光の揺らぎを見ていた。窓外の街路樹が風に揺れるたび、影が微かに動く。その動きはまるで呼吸のようで、静止した絵画たちに命を吹き込んでいるように感じられた。
今日訪れたのは、若手作家の個展。キャンバスに重ねられた絵具の層が、ある角度から見ると驚くほど立体的に浮かび上がる。マチエールの豊かさというのはこういうことなのだと、改めて気づかされた。写真では決して伝わらない、物質としての絵画の存在感。近づいて、離れて、また近づく。その往復運動の中で、作品は表情を変え続ける。
作家本人が会場にいて、少し話を聞くことができた。「最初は平坦に塗っていたんです。でも、あるとき絵具を厚く盛ってみたら、光の当たり方が全然違って。それから試行錯誤の連続でした」。失敗を恐れず、偶然を味方につける姿勢。創作の本質はそこにあるのかもしれない。
帰り道、カフェで一息つきながら考えた。芸術を「わかる/わからない」で分けてしまうのは、もったいない。感じたことが答えなのだと思う。今日の私は、あの揺れる影と、絵具の手触りを想像する時間を持てた。それだけで十分に豊かな経験だった。
夕方、ノートに簡単なスケッチを描いてみる。うまくはないけれど、線を引く瞬間の集中が心地よい。見ることと、描くこと。その両方があるから、世界がより鮮やかに見えてくる。
明日はどんな光に出会えるだろう。その期待を胸に、今日を閉じる。
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