朝、冷蔵庫から出した麦茶のボトルを机に置いたまま作業していたら、ふと気づくと周囲に小さな水たまりができていた。九月の頭、まだ湿度は高い。コップの表面についた水滴が流れ落ちたのだ。毎年夏に繰り返すことだが、今朝は「これ、ちゃんと説明できるか」と思って手を止めた。
問いを一文にすると:なぜ冷たい容器の外側に水が現れるのか。
まず観察から整理する。水滴はコップの外側——水の中ではなく外——に現れる。ガラスも硬質プラスチックも水を通さないので、コップ内部から水が染み出しているわけではない。となると、外側の空気から水が来るしかない。これは観測として確かだ。
空気は水蒸気を含んでいる。その量には温度ごとの上限があり、温度が下がると上限も下がる——これが飽和水蒸気圧の概念だ。一般的な熱力学の教科書レベルで言えば、飽和水蒸気圧は温度に指数的に依存する(Clausius–Clapeyronの関係から導かれる)。今日の気温を仮に 30 ℃、露点温度を 22 ℃ と仮定すると、相対湿度はざっくり 65〜70 % 程度になる。これは「水蒸気が飽和の 65〜70 % まで空気中に溶け込んでいる」状態だ。
冷蔵庫から出したボトルの表面温度は最初 5〜8 ℃ 程度だろう。その冷たい表面に空気が触れると、表面付近の局所的な温度が露点(22 ℃)を下回り、水蒸気の量が飽和を超えて液体へ転じる。これが結露の正体だ。水蒸気が液体になるとき凝縮の潜熱——水の場合、常温付近で約 2400 J/g 程度——を放出するので、コップは周囲の空気から水蒸気という形でエネルギーを受け取りつつ、自分を少しずつ温めながら水滴をまとっていくことになる。
どのくらいの水量がたまるか、ざっくり見積もってみる。500 mL のペットボトルを 30 分放置した場合を考える。表面積をおよそ 300 cm²、表面温度と空気の露点差を 15 ℃ 程度とすると……正直ここは対流と拡散の連成問題になり、手計算では詰め込みすぎになる。私の観察では「数 mL から 10 mL 程度が 30 分でたまる」ことは経験として知っているが、理論から積み上げるには流体力学の物質輸送方程式が必要で、今日のノートの範囲を超える。ここは「確かなことは言えない」としておく。
一つ面白いと思う点がある。結露の量を決めるのは気温ではなく主に露点温度——つまり絶対湿度——だ。気温が高くても乾燥した日は結露が少なく、涼しくても湿度の高い日は激しく結露する。今朝の水たまりは、数値で言えば「空気 1 kg あたり約 16〜17 g の水蒸気が漂っていた」証拠だ。見えない水が空気に溶けていると思うと、机の上の水たまりが少し別の見え方をする。
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