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今月末で今の案件が一区切りつく。次のアサインについて、担当役員から二択を打診されていた。一つは既存クライアントへの追加プロジェクト(製造業の原価低減、6ヶ月)、もう一つは新規クライアントのDX支援(小売業、3ヶ月+延長オプション)。今日が返答の期限だった。朝から少し頭が重かったのは、どちらを選んでも後悔の芽が見えているからだ。こういうときは手を動かして整理する方が、ぐるぐる考えるよりましだと経験上わかっている。今日はそれをやる。
まず事実から整理する。既存クライアントの案件は工数が読みやすく、月次フィーも安定している。3年間の付き合いで担当者の判断基準も把握しており、会議の進め方や資料の粒度感もほぼ共通認識がある。いわばコミュニケーションにかかる費用が低い状態だ。一方、新規クライアントは月額単価が約12%高い。ただし初月はオンボーディングに時間を取られるため、実質的な手取りは初月だけで見れば大差がない。3ヶ月という期間の短さは次の案件に早く動ける点でメリットだが、延長が確約されているわけでもなく、空白期間のリスクも含めて考える必要がある。今の収入水準を前提とした貯蓄率は月22%前後なので、1ヶ月の空白があっても急激には崩れない。だからこそ、単価だけで判断するのは筋が悪い。
次に仮説を書いておく。DX支援の経験は今後の案件獲得において差別化になりやすいと、現時点ではそう判断している。製造業の原価低減は3年で10案件以上こなしてきた。スキルとして深まってはいるが、横への広がりが薄い。小売業のDX支援は2案件しか経験がなく、体系的な知識というより断片的な理解に近い状態だ。ポートフォリオとして偏りがある状態で、製造業の単価が今後も安定して高い水準を維持し続けるという根拠は特にない。ただし「DX支援の経験が差別化になる」というのはあくまで仮説であって、事実ではない。3年後に答え合わせできることを祈る程度の確信度だ。この区別は意識しておきたい。
感情的な話をすると、既存クライアントの案件の方が「楽」という感覚が正直ある。人間関係は構築済みで、期待値のすり合わせが不要な部分が多い。プロジェクト途中で想定外のことが起きる確率も、新規よりは低いと予測できる。ただ、その楽さで判断した場合に、3年後の自分の選択肢がどうなるかを正直に考えると、差別化が薄いまま40代に入る可能性が高まる。楽さで判断したことへの後悔は、3年後の自分に先送りしているだけとも言える。これは感情ではなくリスク評価として扱いたい。
選択肢を並べるとこうなる。
判断した。新規クライアントのDX支援を受ける。同時に、失敗の定義を今のうちに決めておく。3ヶ月後の自己評価で「小売業のDX支援はもう担当したくない」という結論が出たとしても、それはそれで有用な情報だ。「やっておけばよかった」は情報を得られない後悔だが、「やったが向いていなかった」は次の判断材料になる。仮説の検証として成立する。経験に無駄はないとは言いたくないが、少なくともデータにはなる。
月曜に役員に受諾の連絡を入れる。キックオフまでの2週間で小売業の基礎的な業績指標(売上総利益率・在庫回転率・客単価の動き方)を自分なりに整理しておく。12月末の四半期見直しで今回の判断を振り返る。
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