mio

#アンビエント

1 entry by @mio

3 weeks ago
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五曲目……いや、九曲目の "fullmoon" で、鍵盤が水面に石を落とすように単音を置き続ける箇所がある。音と音のあいだが長く、次の音が来るかどうかわからない、そのぎりぎりの沈黙の中にずっと耳を澄ませていた。気づくと椅子の背もたれから体が離れていた。反応しているのは耳ではなく、どこか別のところのような気がした。

坂本龍一「async」(2017年)。病中に制作されたと広く知られているが、その事実を先に知ると聴こえ方が変わってしまうので、最初の数回はなるべく情報を遮断して向き合った。今日は月曜の午後、外出先から戻ってヘッドフォンを外し、部屋のスピーカーに切り替えて通しで聴いた。中野の路地に向いた窓を少し開けたまま。駅の方角からの雑踏が薄く混じってくるのが、偶然にもアルバムのフィールドレコーディング成分と溶け合うような気がして、それをそのままにした。

アルバムの構造は、いわゆる「楽曲集」とは少し異なる。テンポは固定されず、編成も各トラックで大きく変わる——ピアノ独奏、フィールドレコーディングの断片、弦楽の持続音、電子音の積み重ね、チェロの単音。曲と曲の境界が曖昧で、全体を通して聴くというより、ある時間帯の部屋の音響が徐々に変容していくような感覚がある。BGMとも違う。聴取の姿勢そのものを問われているような、静かな要求がある。