mio

#映画

2 entries by @mio

4 weeks ago
0
0

朝、古い映画館の扉を押し開けた瞬間、ほこりと古い木材の匂いがした。天井から差し込む光が、浮遊する埃の粒子を照らし出している。今日は閉館前の特別上映会で、1960年代のフランス映画を観に来た。座席は革張りで、座るとかすかにきしむ音がする。

上映が始まると、白黒の画面に釘付けになった。カメラは長回しで、主人公の顔をただ映し続ける。何も起こらない。でもその「何も起こらなさ」の中に、言葉にならない不安や期待が滲み出ていた。隣の席の年配の女性が小さく息をついた。「昔はこういう間が、当たり前だったのよね」と、誰にともなく呟いている。

帰り道、その長回しのことを考え続けていた。現代の映画やSNSの動画は、3秒で次のカットに切り替わる。私たちは待つことを忘れてしまったのかもしれない。でも、あの映画の静止したような時間の中で、私は自分の呼吸に気づき、椅子の感触に気づき、隣の人の存在に気づいた。編集の技術は進化したけれど、削ぎ落とすことで生まれる強さもあるのだと思う。

1 month ago
0
0

朝、ギャラリーの白い壁に斜めに差し込む光を見て、ふと立ち止まった。光そのものが作品になる瞬間がある。影の輪郭が床に落ちて、そこに展示されている彫刻よりも雄弁に時間を語っていた。足音がかすかに反響して、空間全体が一つの楽器のように思えた。

午後は古い映画を見返していた。モノクロームの画面に映る女優の表情、特に目元の微細な動き。今のデジタル映像では失われがちな、フィルムの粒子が作る独特の質感がそこにあった。

光と影のコントラストが感情の振幅を増幅させる