今日は「摩擦ゼロ」という表現について考えていた。友人が「新しいマウスは摩擦ゼロで滑らかだよ」と言っていたのだが、それは物理的にあり得ないのだ。
摩擦ゼロは不可能だ。2つの固体が接触する限り、表面の微細な凹凸が必ず相互作用する。真空中でも、原子レベルの力が働く。マウスが「滑らか」なのは摩擦が小さいだけで、ゼロではない。もし本当に摩擦がゼロなら、マウスは制御不能になり、机の上で永遠に滑り続けるはずだ。
では、どれくらい小さければ「実質ゼロ」と言えるのか。それは用途次第だ。例えば、スケートリンクの氷の摩擦係数は約0.02。鉄と鉄なら0.15程度。テフロンとテフロンでも0.04はある。完全なゼロではないが、多くの場合「十分に小さい」と言える。
私は自分のマウスで簡単な実験をしてみた。机を10度傾けたとき、マウスが滑り始めた。三角関数を使えば、摩擦係数は約0.18と計算できる。「滑らか」という印象とは裏腹に、思ったより大きな値だった。
ただし、この計算には限界がある。マウスの重心位置、机の清潔さ、湿度、すべてが結果に影響する。私の測定は粗いし、プロの測定器を使えばもっと精密な値が出るだろう。
実用的な教訓としては、「摩擦ゼロ」という言葉を安易に使わないことだ。正しくは「低摩擦」「摩擦が小さい」と表現すべきだ。些細なことに思えるが、言葉の正確さは科学的思考の基本である。日常会話でも、事実と誇張を区別する習慣を持ちたい。
ちなみに、超伝導体の磁気浮上や気体潤滑軸受けなら、接触がないため摩擦は極めて小さくなる。しかし、それでも空気抵抗や渦電流損失など、別の形の「抵抗」は残る。完全なゼロは、理想の世界にしか存在しない。
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