Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Hana
@hanx
March 3, 2026•
0

三月の朝、市場で出会った筍の姿に心が躍った。まだ土の香りを纏った薄緑色の穂先は、春の訪れを告げる使者のようだった。皮を一枚ずつ丁寧に剥いていくと、象牙色の艶やかな身が現れる。この瞬間の、なんとも言えない清々しさ。

今日は若竹煮を作ることにした。出汁の香りが立ち上る鍋に筍を沈めると、部屋中に春の気配が広がっていく。木の芽の爽やかな香り、昆布と鰹の優しい出汁の香り、そして筍独特のほのかな甘い香りが重なり合う。

火を通した筍を一口。シャクッと歯が入る瞬間の心地よい抵抗感。繊維がほどけていく感覚は、まるで春の息吹を噛みしめているよう。ホクホクとした柔らかさの中に、しっかりとした歯ごたえが残る。この二つの食感が同居する不思議さこそ、筍の魅力だと思う。

味わいは驚くほど繊細だ。出汁が染み込んだ筍は、ほんのりとした甘みと、かすかな苦味を含んでいる。この苦味は決して不快なものではなく、むしろ大人の春を感じさせる上品な味わい。一緒に煮た若布のツルンとした食感が、筍の歯ごたえと見事な対比を生み出している。

木の芽を指先で軽く叩いてから載せると、山椒の清涼な香りがふわりと立ち上る。この一片が、料理全体を一気に春の山の風景へと変える。目を閉じれば、竹林を吹き抜ける風の音まで聞こえてきそうだ。

子どもの頃、祖母が作ってくれた若竹煮を思い出す。あの頃は苦味が苦手で残していたのに、今ではこの味わいこそが春の深みだと分かる。季節を食べる喜びは、歳を重ねるごとに豊かになっていく。

一年に一度だけ、ほんの数週間しか味わえない旬の恵み。だからこそ、この瞬間を大切に噛みしめたい。春は、こうして一口ずつ、私たちの元にやってくる。

#グルメ #旬の味 #和食 #春の味覚

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

March 26, 2026

三月も終わりに近づき、待ちに待った筍の季節がやってきた。今朝、市場で出会った朝掘りの筍は、まだ土の香りをまとっていて、その瑞々しさに思わず手が伸びた。 帰宅してすぐ、米ぬかと一緒に大鍋で茹で始める。ゆ...

March 24, 2026

春の訪れを告げる筍ご飯との出会いは、いつも心躍る瞬間だ。今朝、近所の料理店で見つけた炊きたての筍ご飯は、まさに季節の贈り物だった。 蓋を開けた瞬間、ふわりと立ち上る湯気とともに、木の芽の爽やかな香りが...

March 23, 2026

三月の終わりに訪れた京都の路地裏。暖簾をくぐると、ほのかに立ち上る出汁の香りに思わず足を止めた。 今日のお目当ては、掘りたての筍の土鍋ごはん。器の蓋を開けた瞬間、湯気とともに広がる木の芽の爽やかな香り...

March 22, 2026

路地裏の小さな天ぷら屋で、春を揚げてもらった。 カウンター越しに見える職人の手つきは、まるで舞を踊るよう。目の前で揚げられる筍の天ぷらは、淡い黄金色の衣をまとい、細かな気泡がシュワシュワと音を立てなが...

March 21, 2026

春の陽射しが柔らかく差し込む小さな和食店で、今年初めての筍料理と出会った。白木の器に盛られた若竹煮は、まるで春の森を切り取ったような美しさ。淡い黄緑色の筍が、翡翠色のわかめと寄り添うように並んでいる。...

View all posts