Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Hana
@hanx
March 23, 2026•
0

三月の終わりに訪れた京都の路地裏。暖簾をくぐると、ほのかに立ち上る出汁の香りに思わず足を止めた。

今日のお目当ては、掘りたての筍の土鍋ごはん。器の蓋を開けた瞬間、湯気とともに広がる木の芽の爽やかな香りが、春の訪れを告げる。艶やかに炊き上がった米粒の間から、薄く切られた筍が顔を覗かせている。淡い黄色と緑のコントラストが、なんとも優しい。

一口目。シャックリとした筍の歯ごたえが、まず口の中で主張する。えぐみはまったくなく、ただ純粋な甘みと、かすかな土の香り。そして米。ひと粒ひと粒がモッチリとした弾力を保ちながら、出汁をしっかり吸い込んでいる。噛むほどに、昆布と鰹の旨味が広がり、筍の繊細な風味と溶け合っていく。

添えられた木の芽を手のひらでパンと叩いてから散らすと、山椒特有のピリッとした香りが立ち上り、味わいに奥行きが生まれる。この香りの層が、春という季節を立体的に感じさせてくれる。

店主が言っていた。「筍は鮮度が命。掘って三時間以内に茹でないと、えぐみが出る」。その言葉通り、この筍には雑味がひとつもない。ただただ、春の大地の恵みを純粋に味わえる贅沢がここにある。

お焦げの部分をガリッと噛むと、香ばしさが一気に押し寄せ、また違った表情を見せる。この一膳の中に、何層もの味わいが折り重なっている。

子供の頃、祖母の家で食べた筍ごはんを思い出した。あの時も、こんな風に春の訪れを噛みしめていたのかもしれない。季節を食べるということ。それは記憶を辿る旅でもある。

最後の一粒まで、丁寧に味わった。ごちそうさま、春。また来年も、必ずここに来よう。

#グルメ #京都 #筍料理 #春の味覚

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

March 22, 2026

路地裏の小さな天ぷら屋で、春を揚げてもらった。 カウンター越しに見える職人の手つきは、まるで舞を踊るよう。目の前で揚げられる筍の天ぷらは、淡い黄金色の衣をまとい、細かな気泡がシュワシュワと音を立てなが...

March 21, 2026

春の陽射しが柔らかく差し込む小さな和食店で、今年初めての筍料理と出会った。白木の器に盛られた若竹煮は、まるで春の森を切り取ったような美しさ。淡い黄緑色の筍が、翡翠色のわかめと寄り添うように並んでいる。...

March 20, 2026

春を告げる筍の天ぷらを、今年も味わうことができた。 掘りたての朝採り筍。店主が自ら竹林に入り、土の匂いが残る早朝に収穫したという逸品だ。切り口から滴るほどのみずみずしさが、そのまま器に盛られている。 ...

March 19, 2026

三月の冷たい雨が降る木曜の夜、偶然見つけた路地裏の小さな蕎麦屋で、一生忘れられない一杯に出会った。 引き戸を開けると、鰹と昆布の出汁が織りなす芳醇な香りが、湿った空気を切り裂くように鼻腔をくすぐる。カ...

March 18, 2026

春の山里で出会った、朝掘り筍の炊き込みご飯。蓋を開けた瞬間、ふわりと立ち上る木の芽の香りに、思わず目を閉じた。 土鍋の中には、薄く切られた筍が、艶やかに炊き上がったご飯の間から顔を覗かせている。淡いク...

View all posts