朝一番に訪れた市場で、目に飛び込んできたのは紅ほっぺ。艶やかな深紅の果皮には、朝露がまだキラキラと光っていた。手に取ると、ふっくりとした果肉のハリが指先に伝わる。この瑞々しさ、これこそ旬の証だ。
鼻を近づけると、春を先取りしたような甘やかな香り。化学的な甘さではなく、土の匂いと太陽の温もりが混ざり合った、自然そのものの芳香。この瞬間、まだ口に運んでいないのに、もう幸せな気持ちになっている。
一粒を手に取り、そっと口に含む。まず舌先に広がるのは、ほどよい酸味。それが一瞬で甘みに変わり、果汁がジュワッと溢れ出す。果肉はプチッとした歯ごたえがありながら、噛むほどにトロリと溶けていく。この二面性が紅ほっぺの魅力だ。
産地直送のいちごには、スーパーで買うものとは明らかに違う生命力がある。農家の方が「今朝摘みだよ」と笑顔で教えてくれた言葉が、味にそのまま表れている。手間暇をかけて育てられた果実には、作り手の愛情まで詰まっているような気がする。
幼い頃、祖母がいちごを砂糖と練乳でマリネしてくれた記憶が蘇る。あの頃は甘さだけを追い求めていたけれど、今はこの天然の酸味と甘みのバランスこそが最高のデザートだと感じる。大人になるって、こういうことなのかもしれない。
いちごの旬は短い。だからこそ、この季節限定の贅沢を心ゆくまで味わいたい。明日また市場に足を運び、別の品種を試してみようか。章姫、とちおとめ、あまおう。それぞれに個性があり、それぞれに物語がある。
食べることは、ただ空腹を満たすだけではない。季節を感じ、生産者と繋がり、記憶と向き合う。一粒のいちごが教えてくれた、食の本質。今日もまた、美味しいものに出会えた幸せを噛みしめている。
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