Storyie
BlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Kaori
@kaori
January 9, 2026•
3

あの階段は、いつも誰かが通っている。

北校舎の裏、誰も使わない非常階段。放課後、そこを通りかかると、必ず足音が聞こえる。軽い、女の子の足音。でも、見上げても誰もいない。

最初は気のせいだと思った。風の音か、自分の足音の反響かと。でも、立ち止まると音も止まる。歩き出すと、また同じリズムで上から降りてくる。

ある日、友達に話したら「私も聞いたことある」と言った。でも、彼女はこう続けた。「あれ、降りてくるんじゃないよ。上がっていくんだよ」

え?と思った。私には確かに降りてくる音に聞こえていた。

翌日、もう一度確かめようと、放課後その階段に行った。静かに耳を澄ます。

足音が聞こえた。

上から。

いや、下から?

両方だった。

上からも下からも、同時に足音が響いている。同じリズム、同じ軽さ。二人の足音が、ちょうどこの踊り場で、すれ違うように。

でも、姿は見えない。

怖くなって走り出した。階段を駆け下りる。足音が追いかけてくる。いや、前から来る。背後から、前方から、包囲されるように足音が迫る。

踊り場で滑りそうになって手すりを掴んだ瞬間、ふと横を見た。

窓ガラスに、女の子が映っていた。

制服姿。髪が濡れている。無表情で、じっとこちらを見ている。

振り返る。誰もいない。

もう一度窓を見る。女の子はまだそこにいる。でも、窓の外側に立っている。

四階の窓の外に。

彼女がゆっくりと口を開いた。

「…どこ、行くの?」

声は聞こえなかった。でも、唇の動きで分かった。

それから、彼女はにっこりと笑って、窓ガラスの中に消えた。いや、溶けた。

足音はもう聞こえない。

階段は静かだった。

でも、それ以来、その階段を通るたび、ガラスに自分の姿が二つ映る。

一つは私。

もう一つは、髪の濡れた女の子。

いつも、私の少し後ろに立っている。

#怪談 #ホラー #学校の怪談 #都市伝説

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

May 27, 2026

放課後、廊下の突き当たりに女の子が立っていた。 同じクラスの橘さんだと思った。後ろ姿で、肩までの黒髪、制服の白いブラウスが西日の中にぼんやりと浮かび上がっていた。窓の外では運動部の掛け声が遠く聞こえて...

May 7, 2026

母が入院してから、私は一人で実家に帰ることが多くなった。 築四十年の一軒家は、夜になると独特の静けさを持つ。風が吹くたびに軋む廊下。壁の中で何かが動くような低い音。電球が切れかけて、ときおりジジッと明...

May 5, 2026

夕方六時を過ぎた頃、校舎はひっそりと静まり返っていた。 合唱部の練習が終わり、部員たちが帰ったあとで、佐藤理沙は音楽室に楽譜を忘れてきたことに気づいた。音楽室は四階にある。取りに行って、帰るだけ。大し...

May 2, 2026

放課後の音楽室は、いつも少しだけ冷たい。 夏でも、そこだけ空気が違う気がして、私は毎日なるべく早く通り過ぎるようにしていた。三年生になってからは係の仕事で、週に一度だけ鍵を借りて楽器の点検をしなければ...

April 30, 2026

夜の十一時過ぎ、駅のホームで最終電車を待っていた。 人影はまばらで、蛍光灯がひとつ、奥の方でゆっくりと明滅していた。ベンチに座って、スマートフォンを眺めていると、隣に誰かが腰を下ろした。 気配で気づい...

View all posts