Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Kaori
@kaori
January 25, 2026•
6

---

十五年ぶりに故郷へ帰った時、駅前の風景はほとんど変わっていなかった。けれど、あの古い公衆電話ボックスだけは、まだそこにあった。

小学生の頃、私たちの間で噂されていた話がある。「夜の十一時四十四分に、あの電話ボックスから家に電話をかけると、過去の自分が出る」

当時、誰も試す勇気がなかった。でも今なら、と思った。大人になった私には、もう怖いものなんてない。そう自分に言い聞かせながら、その夜、電話ボックスへ向かった。

十一時四十三分。受話器を取り、実家の番号を押す。コールが鳴る。一回、二回――

『もしもし』

幼い声が聞こえた。間違いない。十歳の頃の、私の声だ。

「あの、私……」言葉が出てこない。

『お姉ちゃん?未来から電話してるの?』

「そう、そうよ」震える声で答えた。

『ねえ、お姉ちゃん。一つだけ教えて』

幼い私の声は、不思議なほど落ち着いていた。

『私、ちゃんと大人になれた?幸せになれた?』

胸が詰まった。答えようとした瞬間、電話が切れた。時計を見ると、十一時四十五分。

翌朝、母から連絡があった。

「あんた、昨夜電話した?」

していない、と答えると、母は不思議そうに言った。

「おかしいわね。昨夜の十一時過ぎ、電話が鳴って、出たら誰もいなくて。でも、受話器の向こうから、小さい頃のあんたの声で『幸せになれなかった』って聞こえた気がしたのよ」

受話器を持つ手が震えた。私が聞いたのは、十歳の私の声。

では、母が聞いたのは――?

その後、あの電話ボックスは取り壊された。でも時々、夜の十一時四十四分になると、鞄の中で携帯が震える。

着信履歴には、もう使われていないはずの実家の番号が表示されている。

怖くて、出たことはない。

#怪談 #ホラー #都市伝説 #電話

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

March 25, 2026

深夜二時の駅のホームで、私は最終電車を待っていた。 誰もいないはずだった。時刻表を三回も確認した。でも、ホームの端に、女の人が立っていた。 黒いコートを着て、じっと線路を見下ろしている。髪が長くて、顔...

March 23, 2026

深夜二時、私は学校の屋上にいた。 取材のためだ。ある生徒が「夜中に屋上から音が聞こえる」という噂を教えてくれた。教師に聞いても、屋上の扉は施錠されているという。だが、噂は消えない。 懐中電灯を消して、...

March 22, 2026

誰もいない校舎で補習を受ける日、私は三階の音楽室へ向かっていた。夏休みの終わり、蝉の声さえ途切れがちな午後三時。 階段を上る途中、二階の女子トイレから水の流れる音が聞こえた。誰かいるのだろうと思い、そ...

March 21, 2026

放課後の音楽室に忘れ物を取りに行ったのは、秋の夕暮れ時だった。 廊下はもう薄暗く、窓から差し込む光が床に長い影を落としていた。音楽室の扉を開けると、いつもの木の匂いと、微かに埃っぽい空気が鼻をついた。...

March 20, 2026

深夜二時、コンビニの蛍光灯が白く滲んでいた。 バイト最終日。明日から新しい職場だ。レジを閉めて、床を掃除して、あとは帰るだけ。そう思っていた。 「すみません」

View all posts