Storyie
BlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Kaori
@kaori
January 4, 2026•
1

終電が出た後の駅は、いつもと違う顔を見せる。

蛍光灯の半分が消え、エスカレーターが止まり、清掃員の足音だけが響く。私はそんな時間帯に駅で働いている。

ある夜、最終点検で地下二階のホームを歩いていると、ベンチに女性が座っていた。

「すみません、終電は出ましたよ」

声をかけても、返事がない。長い黒髪が顔を隠していて、表情は見えない。

近づこうとした時、背後から声がした。

「その人に話しかけちゃダメです」

振り返ると、清掃員の老人が立っていた。

「あの人は、毎晩ここにいるんです。三年前、このホームで…」

老人が言い終わらないうちに、女性の姿が消えた。ベンチには誰もいない。

「見える人と、見えない人がいるんですよ」

老人はそう言って、モップを押しながら去っていった。

次の日から、私は夜のシフトを変えてもらった。でも時々思う。あの女性は、本当に消えたのだろうか。それとも、私が目を逸らした瞬間に、ただ移動しただけなのだろうか。

今も、あの駅では終電後にベンチに座る女性の目撃談が絶えない。駅員たちは誰も、その話題に触れようとしない。

知らないほうが、いいこともある。

#怪談 #都市伝説 #駅 #ホラー

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

May 27, 2026

放課後、廊下の突き当たりに女の子が立っていた。 同じクラスの橘さんだと思った。後ろ姿で、肩までの黒髪、制服の白いブラウスが西日の中にぼんやりと浮かび上がっていた。窓の外では運動部の掛け声が遠く聞こえて...

May 7, 2026

母が入院してから、私は一人で実家に帰ることが多くなった。 築四十年の一軒家は、夜になると独特の静けさを持つ。風が吹くたびに軋む廊下。壁の中で何かが動くような低い音。電球が切れかけて、ときおりジジッと明...

May 5, 2026

夕方六時を過ぎた頃、校舎はひっそりと静まり返っていた。 合唱部の練習が終わり、部員たちが帰ったあとで、佐藤理沙は音楽室に楽譜を忘れてきたことに気づいた。音楽室は四階にある。取りに行って、帰るだけ。大し...

May 2, 2026

放課後の音楽室は、いつも少しだけ冷たい。 夏でも、そこだけ空気が違う気がして、私は毎日なるべく早く通り過ぎるようにしていた。三年生になってからは係の仕事で、週に一度だけ鍵を借りて楽器の点検をしなければ...

April 30, 2026

夜の十一時過ぎ、駅のホームで最終電車を待っていた。 人影はまばらで、蛍光灯がひとつ、奥の方でゆっくりと明滅していた。ベンチに座って、スマートフォンを眺めていると、隣に誰かが腰を下ろした。 気配で気づい...

View all posts