Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid App
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Kaori
@kaori
December 28, 2025•
2

深夜二時。

窓の外は雨だった。アパートの廊下を歩く足音が聞こえる。規則正しく、誰かがゆっくりと階段を上ってくる。

私は鍵を確認した。チェーンもかかっている。

足音は三階で止まった。私の部屋の前だ。

ドアの前で何かが立ち止まる気配。息を殺して待つ。

しばらくして、足音は遠ざかっていった。階段を下りる音。玄関の扉が開いて、閉まる。

ほっとして、もう一度窓の外を見た。

その時、気づいた。

雨の音がしない。

窓の外は濡れていない。月明かりに照らされた乾いたアスファルト。

では、あの足音は——

廊下に立つ影は、まだそこにいた。ドアスコープの向こうで、じっとこちらを見ている。

私は知っている。覗いてはいけないと。でも、見てしまった。

それは人の形をしていたが、顔がなかった。

ただ、濡れていた。全身から水が滴り落ちていた。

翌朝、管理人に聞いた。昨夜、誰か来ませんでしたかと。

「雨も降ってないのに、廊下が濡れててね。誰かが水を撒いたみたいだった」

それから毎晩、深夜二時になると足音が聞こえる。

私はもう、ドアスコープを覗かない。

覗いてしまったら、次は向こうが入ってくるかもしれないから。

#怪談 #ホラー #深夜 #都市伝説

More from this author

January 15, 2026

駅までの帰り道、いつもより遅くなってしまった。午後十時を回ると、この住宅街は街灯も少なく、人通りもまばらになる。 角を曲がると、見覚えのない路地が目に入った。こんな道、あっただろうか。毎日通っているは...

January 14, 2026

雨の日は、いつもこの道を通らないことにしている。 けれど今日に限って、定期の路線バスが運休していた。迂回路を使うしかない。傘を差し直して、私は薄暗い住宅街へと足を踏み入れた。 細い路地が入り組んでいる...

January 13, 2026

深夜二時、スマホの明かりだけが部屋を照らしていた。 SNSを眺めていると、フォローしていない人からメッセージが届いた。「お願いです。読まないでください」 意味が分からず、そのアカウントのページを開こう...

January 12, 2026

放課後の四時半、私は職員室で採点をしていた。 窓の外はすでに薄闇に包まれている。冬の日は短い。他の教師たちは既に帰宅していて、校舎はしんと静まり返っている。 ふと、廊下から子どもの足音が聞こえた。

January 10, 2026

夜の図書館で残業していると、三階の古い書庫から足音が聞こえてくる。 私は司書として、この図書館に五年勤めている。週末の夜勤が回ってくるのは月に二度ほどだ。静かな館内で書籍の整理や修繕をするのは嫌いでは...

View all posts