深夜零時を回って、アパートの廊下を歩いていた。階段の踊り場に差し掛かると、微かに水音が聞こえた。滴る音。規則的で、少しずつ近づいてくる。
足を止めた。
音は止まった。
また歩き出すと、また水音。今度は背後から。振り返ると、何もない。ただ、薄暗い廊下が続いているだけ。でも床が濡れている。小さな水たまりが点々と続いて、私が来た方向へ伸びている。
さっき通った時、こんなものはなかった。
水たまりを見つめていると、それが少しずつ形を変えていくのに気づいた。円形だったものが細長く伸びて、やがて人の足跡のような形になった。濡れた足跡。裸足の。
一歩、二歩、三歩。
数えながら、私は自分の部屋のドアまで走った。鍵を開けて飛び込み、ドアを閉めた。息を整える。外の廊下からは何も聞こえない。
安堵のため息をついて、室内に目を向けた時、それを見た。
玄関の床。そこから続く濡れた足跡。私の足は乾いている。誰も入ってきていない。でも足跡は確かにあって、寝室の方へと続いていた。
その先には開いたままのクローゼット。
滴る音が、また聞こえた。今度は部屋の中から。
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