土曜の昼すぎ、扇風機の首振りを止めてソファに横になっていた。聴くつもりで再生したわけではなく、ただ部屋に音を流しておこうという気分だった。Floating PointsとPharoah Sandersの『Promises』(2021年)は、そういう聴き方を許してくれる作品だとずっと思ってきたし、今日もそのつもりだった。ところが気づいたら二周目が静かに始まっていて、私は半分起き上がり、窓から入ってくる光の角度を確かめるようなことをしていた。何かを見つけたわけではない。ただ、そうせずにはいられなかった。
このアルバムは九つの章から成る、約46分のひとつながりの組曲として構成されている。冒頭からSam Shepherd(Floating Points)のピアノとハーモニウムの和音が、時間の中に静止画のように据えられる。装飾が少なく、移行がゆっくりで、コード進行の展開よりも音の持続と減衰の過程に耳が向く。Pharoah Sandersのソプラノサックスが登場するのはかなりあとのことで、最初のフレーズはほとんど息の音に近い短いものだ。ロンドン交響楽団の弦はその周囲を漂うように配置されていて、どのパートも前に出てこようとしない。全体のテンポを「遅い」と言うのは正確ではなくて、時間の単位が別のところに設定されている、という感覚に近い。四分音符ではなく呼吸で拍を数えているような音楽だと思う。
録音の空間がよく見える作品だと思う。弦のロングトーンが消えていく末尾の微細な揺れ、ピアノの余韻が落ちていく過程に紛れ込む部屋の気配、サックスの音が鳴り終える直前の沈黙の質感。どれも、スピーカーで鳴らしたほうが伝わりやすい種類の情報だと感じて、棚の奥にしまっていたブックシェルフスピーカーを今日は引っ張り出した。中野のアパートは広くないが、午後の光が斜めに奥まで差し込む時間帯に限って、この音楽はよく馴染む。受け取る側の条件として、そういう相性がある。