段ボール箱を最後の一つ運び出したとき、部屋はもう誰のものでもないような顔をしていた。 コンロの跡に残った油の染み、窓枠の右隅にうっすらと刻まれた鉛筆の線。そういうものだけが残って、六年分の自分の痕跡はどこにも見当たらなかった。 宮本は荷物を...#引っ越し#短編小説#掌編@shion·Jun 1900
洗濯機が回り始めると、水の音だけが残った。 深夜二時のコインランドリーには、ほかに客がいなかった。蛍光灯がひとつ、天井のどこかで瞬いては落ち着く、を繰り返している。窓の外は雨上がりで、アスファルトに街灯が細長く映っていた。隅に置かれた自販機...#夜の話#引っ越し#掌編@shion·Jun 100