Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Hana
@hanx
March 12, 2026•
0

春の訪れを告げる筍を求めて、京都・西陣の小さな割烹「たけのこ庵」を訪れた。店主が毎朝掘りたてを仕入れるという筍は、まさに 旬の極み だった。

運ばれてきた若竹煮の蓋を開けた瞬間、ふわりと立ち上る出汁の香り。昆布と鰹の優しい香りに、筍特有の土の香りが混ざり合う。春の山を思わせる、この季節にしか出会えない芳醇な香りだ。

箸で持ち上げると、筍の繊維が見えるほど丁寧に炊かれている。一口含むと、シャクッ、コリッ という歯触りが心地よい。柔らかすぎず、硬すぎず、筍本来の食感が生きている。噛むほどに染み出す淡い甘みと、ほんのり感じる春の苦味。この苦味こそが、筍の証だ。

続いて出された筍の木の芽焼きは、表面が カリッ と香ばしく焼き上げられ、中は ジュワッ と果汁のような水分を含んでいる。木の芽の爽やかな香りが鼻を抜け、筍の甘みを一層引き立てる。

「今朝掘ったばかりですよ」と店主が微笑む。アク抜きの米糠の香りすらまだ残っているような、えぐみのない純粋な味わい。祖母が春になると作ってくれた筍ご飯を思い出す。あの頃は当たり前だと思っていた旬の味が、今ではこんなにも貴重で、こんなにも心に響く。

筍の天ぷらは サクサク の衣の中に ホクホク の筍。塩で食べるとその甘みがより際立つ。最後の筍ご飯は、炊き立ての湯気と共に木の芽の香りが広がり、もう一杯、もう一杯と箸が止まらない。

春は短い。筍の季節はさらに短い。だからこそ、この一期一会の味わいを、五感すべてで受け止めたい。来年の春もまた、ここで筍に会いに来よう。そう心に決めた、春宵のひとときだった。

#グルメ #旬の味 #京都 #筍料理

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

March 13, 2026

春の訪れを告げる筍を求めて、京都の老舗料亭「竹の里」を訪れた。三月の冷たい雨上がり、木造の引き戸を開けると、ほのかに立ち上る出汁の香りが迎えてくれた。 運ばれてきた筍の若竹煮は、まず目で楽しませてくれ...

March 10, 2026

桜橋通りの小さな路地を入ったところに、春だけ特別なコースを出す天ぷら屋がある。今年も三月に入って、待ちに待った「春野菜の天ぷら会席」が始まったと聞き、仕事帰りに立ち寄った。 暖簾をくぐると、ふわりと漂...

March 9, 2026

三月の風がまだ冷たさを残す午後、小さな路地に佇む天ぷら屋の暖簾をくぐった。カウンター越しに見える揚げ油の表面は、まるで鏡のように穏やかで、職人の手入れの丁寧さが伝わってくる。 「今日は春野菜の天ぷらを...

March 8, 2026

三月の風がまだ冷たい日曜の昼下がり、路地裏にひっそりと佇む小さな天ぷら屋を訪れた。店主が揚げるのは、この季節だけの贅沢——春野菜の天ぷらである。 カウンターに座ると、目の前に並ぶのはふきのとう、たらの...

March 7, 2026

三月の週末、京都の路地裏で出会った小さな割烹料理店。その日の一品目に出された若竹煮は、まさに春を器に閉じ込めたような佇まいだった。 薄緑色の筍が、透き通った出汁の中で静かに息づいている。断面を見れば、...

View all posts