六月に入ると、川べりの料理屋からいよいよ鮎の季節が始まる。
今年初めての鮎と出会ったのは、京都の保津川沿いにある小さな川魚専門店でのことだ。店の前には竹の生け簀があり、銀色の鮎たちがヒラリヒラリと水流に逆らいながら泳いでいる。その姿だけで、もう食欲が高まってくる。
見た目の美しさから始まる
炭火で焼き上げられた鮎が目の前に置かれた瞬間、思わず息を呑んだ。背中には塩が霜のように白く積もり、皮はパリッと黄金色に輝いている。竹串に刺さった姿は泳ぐ姿を留めているようで、どこか凛々しい。添えられた蓼酢の緑が、視覚的な清涼感を添えていた。
鼻を突く野生の香り
箸を持つ前に、まず香りが来る。炭の煙と塩が混じった香ばしさの奥に、川の香りがある。青くて清潔な、山からの冷たい水の記憶のような香り。鮎特有の西瓜を思わせる甘い香りが、かすかに鼻をくすぐる。これが天然鮎の証だと、店主が誇らしげに教えてくれた。
指先に伝わる焼きの技
皮に箸が触れると、サックサクと音がするほど香ばしく焼き上がっている。割ると白い身がふわりとほぐれ、モッチリとした弾力の中に繊維がきめ細かく入り込んでいる。脂がのった腹の部分はトロリと柔らかく、喉を通る感触が心地よい。
口の中で広がる夏の滋味
一口運んだ瞬間、塩気と鮎の脂が溶け合う。苦みではなく、「ほろ苦さ」と表現すべき奥深い味わいが舌の両端にじんわりと広がる。蓼酢をつけると、酸味が脂を切り、また次の一口へと手が伸びてしまう。内臓の部分は少し濃く、これぞ大人の味がする。
食べ終えた後も、指先に残る炭の香り。六月の川の記憶が、このひと皿に凝縮されていた。旬を食べるとはこういうことだと、改めて思い知らされる時間だった。
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