三週間前から、夜中の三時に必ず目が覚める。
最初は気のせいだと思っていた。でも毎晩、ちょうど三時になると何かに引っ張られるように意識が浮上する。真っ暗な部屋の中で、私は天井を見つめる。
そして、音が聞こえる。
ぽた、ぽた、ぽた。
水滴が落ちる音。規則正しく、どこかから響いてくる。台所の蛇口を確認した。締まっている。風呂場も、洗面所も、全て問題ない。それでも音は止まらない。
五日目、私は音の方向を突き止めようとした。廊下に出ると、音は遠ざかる。部屋に戻ると、また聞こえる。まるで私を避けるように、音は移動していく。
一週間目、気づいてしまった。音は壁の中から聞こえている。
大家に相談しても、「配管は問題ありません」と言われるだけだった。でも毎晩三時、私は目を覚まし、壁の向こうから聞こえる水音に耳を澄ませる。
昨夜、新しいことに気づいた。
水音の間隔が、だんだん速くなっている。最初は五秒おきだった。今は三秒おき。まるで何かが近づいてくるように。
そして今夜。二時五十五分に、私は目を覚ました。早すぎる。心臓が跳ねる。デジタル時計の数字が二時五十九分に変わる。
三時になった。
でも、音がしない。
初めて、あの水音が聞こえない夜。安堵するべきなのに、胸が締め付けられる。何かが終わったのではない。何かが、始まろうとしている。
壁が、湿っている。
寝室の壁に手を当てると、冷たい水が滲み出している。壁紙が、ゆっくりと剥がれ始める。
その向こうに、何かがいる。
ずっと待っていた、何かが。
#怪談 #ホラー #都市伝説 #恐怖