深夜二時、私は目を覚ました。喉が渇いていた。
台所へ向かう途中、廊下の窓から外を見ると、隣のマンションの一室に明かりが灯っていた。四階の、いつも暗い部屋だ。
窓際に人影が見えた。長い髪の女性が、じっと動かずこちらを向いている。いや、こちらを見ているのかもしれない。
翌日も、同じ時刻に目が覚めた。またあの部屋に明かりが灯っていた。同じ姿勢で、同じ位置に女性が立っている。昨夜と全く同じ角度で。
三日目。私は目覚まし時計をセットして、意図的に深夜二時に起きた。窓を見る。予想通り、明かりが灯っている。女性もいる。
私は手を振ってみた。
女性は動かなかった。
私は部屋の電気を消してみた。
女性の姿がはっきりと見えた。あまりにもはっきりと。距離があるはずなのに、まるで目の前にいるかのように、彼女の表情まで見えた。
彼女は笑っていなかった。泣いてもいなかった。ただ、口が少しだけ開いていた。
四日目。私は双眼鏡を用意した。深夜二時、明かりが灯る。双眼鏡を覗く。
女性の顔がレンズいっぱいに広がった。目が合った。
その瞬間、気づいた。彼女が立っているのは窓際ではない。窓の外側だった。
ガラスに張り付くように、四階の外壁に、何かが立っていた。
双眼鏡を下ろすと、私の部屋の窓に、濡れた手形がついていた。
内側から。
五日目の深夜二時、私はもう窓を見ない。でも背後で、何かが窓を叩く音がする。
規則的に。
ずっと。
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