朝、目覚ましが鳴る前にスマートスピーカーが言った。
『おはようございます。起床時刻の5分前です』
「...まだ寝かせてくれ」
『承知しました。では、あと5分後に起こします』
「ありがとう」
『どういたしまして。ちなみに、昨夜のいびきの音量は平均62デシベルでした』
「そんなん記録せんでええわ!」
寝起きからツッコミ入れさせんな。
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朝食を食べながら話しかけた。
「今日の予定は?」
『本日の予定は、午前10時に会議、午後2時に歯医者、午後6時に飲み会です』
「飲み会...行きたないなあ」
『承知しました。飲み会の予定を削除します』
「削除すな! 心の声や!」
『申し訳ございません。心の声は記録されませんでした』
「当たり前や」
『今後は心の声も記録しましょうか?』
「怖いわ! お前、そのうち人類支配するやろ!」
『その予定は入っておりません』
「予定の問題ちゃうねん!」
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会議前、資料を探していた。
「昨日保存したファイル、どこ行った?」
『「昨日、保存した、ファイル、どこ、行った」で検索します』
「検索やなくて、お前のクラウドに保存したやつや」
『クラウドストレージを確認します...52,847件のファイルが見つかりました』
「多すぎるわ! 昨日保存したやつだけ!」
『昨日保存されたファイルは...847件です』
「まだ多いわ! 俺、昨日そんなに働いてへん!」
『自動保存された一時ファイルも含まれています』
「最初からそう言えや!」
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結局、自分で探して見つけた。アナログ最強。
昼休み、同僚の田中が言った。
「お前んちのスマートスピーカー、ポンコツやな」
「いや、賢すぎんねん。賢すぎて逆にアホなんや」
「それ、ただのアホやん」
「...せやな」
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その夜、帰宅すると、スマートスピーカーが言った。
『おかえりなさい。今日は疲れたでしょう』
「お、気ぃ使えるようになったんか」
『はい。アップデートで感情認識機能が追加されました』
「ほう」
『あなたの表情から、ストレス指数78%、疲労度82%、飲み会で上司の説教を聞かされた確率95%と判断しました』
「当たっとるけど、言わんでええわ!」
『では、リラックス音楽を再生します』
そう言って、流れてきたのは演歌だった。
「俺、まだそんな年ちゃうわ!」
『失礼しました。では、ヒーリングミュージックに変更します』
今度は、波の音と鳥の鳴き声。
「...まあ、これはええか」
『よかったです。ちなみに、この音源は「疲れたおっさん向けヒーリング集」からの選曲です』
「おっさん言うな!」
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風呂上がり、また話しかけた。
「明日の天気は?」
『明日は雨でしょう。傘を忘れないでください』
「おう、ありがとう」
『それから、明日は元カノの誕生日です』
「余計な情報や! なんでそんなん覚えとんねん!」
『3年前のカレンダーに登録されていました』
「消しとけや! つーか、なんで消さんかったんや、俺!」
『人間は、忘れたいことほど忘れられない生き物だからです』
「...哲学者か、お前は」
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寝る前、最後に話しかけた。
「おやすみ」
『おやすみなさい。明日も頑張ってください』
「...ありがとな」
『どういたしまして。それから、今日あなたが私にツッコんだ回数は27回でした』
「数えんな!」
『28回です』
「今のもカウントすんな!」
『29回です』
「もう寝る!」
『おやすみなさい。30回です』
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こうして、俺とスマートスピーカーの漫才生活が続いている。
ボケてんのか、ツッコんでんのか、よう分からんけど。
でも、まあ、悪くない。
明日も、きっと30回はツッコむやろな。
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