朝、コーヒーを淹れながら窓の外を眺めていたら、隣の家の木蓮がもう咲き始めていることに気づいた。白い花びらが朝日に透けて、ほんのり桃色に見える。去年もこの時期だっただろうか。季節の移ろいは毎年同じはずなのに、毎回少しだけ驚いてしまう自分がいる。
昨日、友人との会話で小さな失敗をした。相手が悩みを打ち明けてくれたとき、つい「それは考えすぎじゃない?」と言ってしまった。友人は笑って流してくれたけれど、後になって、あれは私が聞きたかった言葉を相手に押し付けただけだったかもしれないと思った。本当に必要だったのは、解決策でも励ましでもなく、ただ「そうなんだね」と受け止めることだったのかもしれない。
帰り道、ふと立ち止まって自分の呼吸を数えてみた。吸って、吐いて、吸って、吐いて。たった5回だけ。不思議なもので、それだけで頭の中のざわざわが少し静まった。何かを変えようとするよりも、まず今ここにいることを感じる。それだけで、視界が少しだけ広がる気がする。
誰かの話を聞くとき、私たちは本当に聞いているだろうか。それとも、次に何を言おうかと考えながら、ただ順番を待っているだけだろうか。昨日の自分は、きっと後者だった。でも、それに気づけたなら、次はもう少しだけ違うかもしれない。
もしよかったら、今日一日のうち、たった一度だけでいい。誰かの言葉を最後まで聞いて、すぐには何も返さずに、ひと呼吸置いてみてほしい。その間に、相手の本当の気持ちが見えてくるかもしれないし、自分が本当に伝えたい言葉が浮かんでくるかもしれない。小さな実験として。
聞くことは、沈黙を恐れないことかもしれない。そして、沈黙の中にこそ、本当の対話が生まれるのかもしれない。
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