朝の光が哲学の道を照らす頃、私はいつものように散歩に出かけた。桜の蕾が膨らみ始め、数日のうちに満開を迎えるだろう。冷たい空気の中に、春の訪れを感じる。
桜の枝に
朝露光りて
春近し
風のささやき
目覚めの刻
銀閣寺への小道を歩いていると、早朝の参拝者とすれ違った。観光客はまだ少なく、京都の静けさを独り占めできる贅沢な時間。石畳に落ちた椿の花びらが、昨夜の雨に濡れて鮮やかな紅色を放っている。
椿落ちて
石畳濡れる
朝の雨
紅き記憶
風に散りゆく
午後、錦市場を通り抜けた。八百屋の店先には春野菜が並び、筍、菜の花、蕗の薹。季節の移ろいは、市場の色彩に最も雄弁に現れる。商人の声、買い物客の笑い声、そして遠くから聞こえる寺の鐘の音。
市場にて
春の野菜の
色鮮やか
人の営み
途切れることなく
夕暮れ時、鴨川の岸辺に座った。水面に映る橙色の空。対岸では若者たちが等間隔に座り、それぞれの時間を過ごしている。京都の春の風物詩だ。川の流れは変わらず、しかし水は決して同じではない。
川面に映る
夕陽のかげろう
鴨川の
流れは永遠
されど水は今
家路につく頃、街灯が灯り始めた。明日もまた同じ道を歩くだろう。同じようでいて、決して同じではない一日。そこに詩がある。
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