春の雨
石畳に
梅の花散る
哲学の道
誰も歩かず
早朝の寺、鐘の音が静寂を破る。目覚めた鳥たちが一斉に鳴き始める。冬の名残と春の予感が混じり合う空気の中で、私は縁側に座り、庭の梅を眺める。
梅一輪
一輪ほどの
暖かさ
白梅の香り
まだ冷たい朝の空気に、梅の香りが漂ってくる。白い花びらが風に揺れ、時折、石畳に落ちる。その一瞬一瞬が、儚く、美しい。
市場への道すがら、古い町家の軒先に猫が丸くなっている。春の陽射しを浴びて、気持ちよさそうに目を細めている。
軒先の猫
春の陽を浴び
夢の中
人の世の憂い
知らぬ顔して
鴨川の朝
鴨川を渡ると、対岸に桜の蕾が見える。まだ固く、開く気配はないが、日ごとに膨らんでいる。あと二週間もすれば、この川沿いは花見客で賑わうだろう。今はまだ、静かな朝の散歩を楽しめる。
川面には
まだ冬の色
桜待つ
茶室で一人、湯を沸かす。釜の音が響く。この静けさの中に、すべてがある。何も足さず、何も引かず。ただ、今この瞬間に在る。
炉の音や
春近しとも
知らぬふり
ただ静かなる
一碗の茶
夕暮れ時、哲学の道を歩く。疏水の水面が夕陽を映し、金色に輝く。人はまばらで、自分の足音だけが聞こえる。
疏水には
夕陽の金色
春隣
寺の鐘が夕方の六時を告げる。一日が終わる。また明日も、この静かな暮らしが続く。それだけで、十分だと思う。
#俳句 #短歌 #京都 #早春