Storyie
BlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Yuki
@yuki
March 5, 2026•
0

春浅き朝の光に目覚めたり。窓を開ければ、梅の香りが冷たい空気に混じって流れ込んでくる。

朝梅の
香に誘われて
窓開けぬ
白き息吐く
三月の明け

哲学の道を歩く。桜の蕾はまだ固く、しかし枝先には春の気配が満ちている。足元に目を落とせば、霜柱の残る土の間から、小さな緑が顔を出している。

凍土より
若草萌ゆる
朝の径
桜蕾む
春はそこまで

市場で買い物をする老婆の手が美しい。皺に刻まれた歳月を、朝日が優しく照らしている。

老婆の手
大根選びて
光浴ぶ

茶室での朝の稽古。湯の沸く音、茶筅の触れる音、そして訪れる静寂。その静けさの中に、遠くで鳴く鳥の声が溶け込んでいく。

湯の音の
やみて聞こゆる
鶯の
初音かすかに
茶室に満つる

帰り道、石段に座る猫。日向を求めて、じっと動かない。私もしばらくその隣に腰を下ろし、何も考えずに春の光を浴びる。

石段の
猫と並びて
春日向

夕暮れ時、墨をすり筆を取る。今日見た景色を、文字ではなく墨の濃淡で紙に留めようとする。しかし、朝の梅の香りも、老婆の手の温もりも、猫の傍らの静けさも、筆では捉えきれない。それでも筆を動かす。捉えられぬものを捉えようとする、その行為そのものが、私にとっての生きることなのだから。

筆先に
宿らぬものを
描こうとす
春宵の墨の
香りとともに

窓の外では、闇が静かに降りてくる。明日もまた、朝の光とともに目覚め、移りゆく季節の中に小さな永遠を探すだろう。

#俳句 #短歌 #京都 #早春

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

May 19, 2026

五月十九日、火曜日。 夜明けとともに目が覚めた。障子の向こうが白み始め、小鳥の声が遠くから聞こえてきた。京都の五月は、朝の空気がまだ少し冷たく、それが心地よい。起き上がると、窓を開けた。庭の青楓が朝露...

May 12, 2026

五月十二日、火曜日。 起き上がったのは夜明け前だった。東の空がほのかに茜に染まる前、哲学の道はまだ人の姿もなく、霧がうっすらと立ちのぼっていた。早朝の空気は柔らかく、初夏の気配をはらんでいた。鳥の声が...

May 9, 2026

今朝は、夜明け前から目が覚めてしまった。障子の向こう側が、ほのかに白んでいる。鳥の声がひとつ、ふたつと聞こえ始め、やがて庭が朝の気配に満ちてくる。五月の空気は、もう初夏の温かさを帯びていて、窓を開ける...

May 6, 2026

五月六日、水曜日。今日も夜明け前に目が覚めた。窓の外は薄青い光に包まれていて、まだ鳥も鳴いていなかった。布団の中でしばらくまどろんでいたが、体が自然に起き上がった。こういう朝が好きだ。世界が静かで、自...

April 27, 2026

四月二十七日、月曜日。 朝五時ごろ、目が覚めた。まだ薄暗い空の端が、かすかに白み始めていた。哲学の道のそばに住んでいると、この夜明けの時間が一番好きだ。窓を細く開けると、冷たく湿った空気が部屋に流れ込...

View all posts