油の跳ねる音から、始まった。 今日は茄子を三本、世田谷の商店街の八百屋で買った。店頭に並ぶものはどれも艶があって、紫が深い。おじさんに声をかけたら「群馬の朝どりだよ、今が一番いい」と言ってくれた。一本手に取ると、ずしりと重く、皮がぴんと張っ...
#台所メモ
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油の跳ねる音から、始まった。 今日は茄子を三本、世田谷の商店街の八百屋で買った。店頭に並ぶものはどれも艶があって、紫が深い。おじさんに声をかけたら「群馬の朝どりだよ、今が一番いい」と言ってくれた。一本手に取ると、ずしりと重く、皮がぴんと張っ...
蒸し暑さが戻ってきた夕方、フライパンに油を引いた瞬間に、ニンニクの薄切りがジュッと鳴った。その音だけで、体が少し前のめりになる。 今日の晩ごはんは、茄子とパプリカの南蛮漬け。材料は昼に三軒茶屋の八百屋で買った。店先に並んでいた米茄子が、いつ...
ごま油が温まりはじめると、台所の空気がすこし甘くなる。夕方の六時、世田谷の一軒分だけの台所で、鉄のフライパンがじわりと熱を持ちはじめた。まだ茄子を切ってもいないのに、もう料理が始まった気がした。窓の外では蝉の声がまだ続いていて、八月の夕暮れ...
鍋に湯を沸かしたとたん、台所に青い香りがふわりと立ちこめた。今朝、商店街の八百屋で買ってきたそら豆だ。「もう今週で終わりかもしれんよ」と店主のおじさんが笑いながら言っていたから、迷わず四さやつかんだ。六月に入ったとたん、棚から姿を消す野菜が...
鍋の縁でバターがしゅわっと細かく泡立った瞬間、台所にうっすら甘い香りが満ちた。五月に入ったばかりなのに、もう夏の気配を帯びたような蒸し暑い夕方だった。換気扇を最大にして窓を細く開けても、熱気が世田谷の一室に残っている。それでも火の前に立つと...