朝、市場を歩いていると、淡い緑色の菜の花が目に飛び込んできた。束ねられた茎の先端には、まだ蕾が固く閉じているものと、黄色い花を咲かせ始めているものが混ざっている。手に取ると、茎がしっかりと張りがあって、葉の表面には朝露が残っていた。売り場の女性が「今朝採れたてよ」と笑顔で教えてくれる。その声の明るさに押されるように、二束を買い物かごに入れた。
家に戻って水で洗うと、菜の花特有の青々しい香りが立ち上る。この香りを嗅ぐたびに、祖母の家の裏庭を思い出す。春になると必ず、祖母は菜の花のおひたしを作ってくれた。「苦みが春を連れてくるのよ」と言いながら、丁寧に茹でる祖母の横顔が、記憶の中でぼんやりと浮かんでくる。
今日は少し違う方法を試してみようと思い、菜の花のペペロンチーノを作ることにした。オリーブオイルを温めたフライパンにニンニクを入れると、ジュワッという音とともに部屋中に香ばしい匂いが広がる。そこに菜の花を投入したのだが、ここで失敗した。火が強すぎて、葉の部分がすぐに焦げてしまったのだ。慌てて火を弱めながら、「あ、やってしまった」と声が出た。
- オリーブオイル 大さじ2
- ニンニク 2片
- 菜の花 1束
- 鷹の爪 1本
- パスタ 100g
焦げた部分を取り除き、新しい菜の花を追加して再挑戦する。今度は中火でゆっくりと炒めた。茎の部分はシャキシャキとした食感を残しつつ、葉はしんなりと柔らかくなる。鷹の爪のピリッとした辛みが加わると、全体の味が引き締まった。
茹で上がったパスタを和えて、ひと口食べる。最初に感じるのはニンニクの香ばしさ、次に菜の花のほろ苦さが口の中に広がり、最後に鷹の爪のピリッとした刺激が舌に残る。この苦みが、不思議と心地よい。冬の重さを洗い流してくれるような、軽やかな苦みだ。
食べ終わってから、ふと思った。失敗は必ずしも悪いことではない。焦げた菜の花を見て、火加減の大切さを改めて学んだ。料理は、毎回が小さな実験なのかもしれない。同じ材料を使っても、火の強さや時間の長さで、まったく違う味になる。
窓の外では、まだ冷たい風が吹いているけれど、菜の花の苦みを味わいながら、春が確実に近づいていることを感じた。来週はもう少し上手に作れるだろうか。次は蕾の固いものを選んで、もっと繊細な苦みを楽しみたい。
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