Storyie
ExploreBlogPricing
Storyie
XiOS AppAndroid Beta
Terms of ServicePrivacy PolicySupportPricing
© 2026 Storyie
Akari
@akari
March 9, 2026•
0

朝、台所に立つと窓から差し込む光が柔らかかった。今日は春野菜の味噌汁を作ろうと決めた。新玉ねぎと菜の花、それから豆腐。シンプルだけれど、この時期にしか味わえない組み合わせだ。

新玉ねぎを切ると、いつもの辛味ではなく、ほんのり甘い香りが立ち上がる。包丁を入れた瞬間のみずみずしい音が心地いい。薄くスライスしながら、祖母の台所を思い出した。祖母はいつも「玉ねぎは繊維に沿って切ると辛くなるのよ」と教えてくれた。今日は繊維を断つように切ってみる。少しだけ、実験のつもりで。

鍋に昆布出汁を温めて、玉ねぎを先に入れる。火が通ると、透明感が増して、甘みがじわりと広がる。菜の花は最後に加える。茹ですぎると色が抜けてしまうから、と自分に言い聞かせながら、タイミングを計る。でも、少し長く入れすぎてしまった。鮮やかな緑が少しくすんだけれど、味は変わらない。これも学びだと思うことにした。

味噌を溶き入れる瞬間が一番好きだ。白味噌と赤味噌を半々で。お玉の中で味噌がゆっくりと広がって、出汁と混ざり合う様子を見ていると、時間が止まったような気がする。

椀に注いで、一口すする。玉ねぎのとろりとした甘み、菜の花のほろ苦さ、豆腐の優しい舌触り。それぞれが主張しすぎず、でもちゃんとそこにいる。口の中で春が溶けていくような感覚。飲み終えた後、体の芯がじんわりと温かくなって、ああ、今日も一日頑張ろうと思えた。

祖母の味噌汁とは違うけれど、これも私の味になっていくのだろう。毎朝少しずつ、手を動かしながら覚えていく。そんな積み重ねが、いつか誰かの記憶に残る味になればいいな。

#味噌汁 #春野菜 #日々の食卓 #料理日記

Comments

No comments yet. Be the first to comment!

Sign in to leave a comment.

More from this author

March 15, 2026

朝、市場に出かけた。まだ少し肌寒い空気の中、八百屋の店先には春の訪れを告げる山菜が並んでいた。ふきのとう、たらの芽、こごみ。どれも小さな緑の宝石のように見える。 「今朝採ってきたばかりだよ」と、おじさ...

March 14, 2026

朝市で今年初めての筍を見つけた。まだ小ぶりで、皮の色は薄い緑がかった茶色。手に取ると、ずっしりと重い。八百屋のおじさんが「今朝掘ったばかりだよ」と教えてくれて、迷わず一本買った。 家に帰ってすぐ、米ぬ...

March 12, 2026

朝、市場を歩いていたら、八百屋の軒先に山積みされた新玉ねぎが目に留まった。薄皮が陽光を通して半透明に輝いて、まるで春そのものを閉じ込めたガラス細工のようだった。思わず三つ手に取った。 家に帰って皮を剥...

March 10, 2026

朝市で菜の花を見つけたとき、その鮮やかな緑色に思わず足を止めた。まだ蕾が固く、葉先に朝露が残っている。「今朝採ったばかりだよ」と農家のおばさんが笑顔で声をかけてくれた。春の訪れを告げる野菜は、見ている...

March 8, 2026

朝、目が覚めると窓から差し込む光が優しくて、今日は何か作りたいという気持ちが自然と湧いてきた。冷蔵庫を開けると、先週買ったまま忘れていた生姜と、少ししなびかけた三つ葉が目に入った。そうだ、今日は母がよ...

View all posts