朝の市場で見つけた真紅のトマトが、今日の主役だ。手のひらに乗せると、ずっしりとした重みが心地よい。皮は張りがあって艶やか、まるで磨かれたルビーのような輝きを放っている。
包丁を入れた瞬間、プシュッという小さな音とともに、みずみずしい果肉があふれ出す。切り口からは、青々しい爽やかな香りと、ほんのり甘い芳香が立ち上る。トマト特有の青臭さはほとんどなく、代わりに完熟した果実のような豊かな香りが鼻腔をくすぐる。
ひと口頬張ると、ジュワッと果汁が口いっぱいに広がる。皮は薄くて柔らかく、噛むとプチンと心地よい弾力。果肉はトロッとしていて、種の周りのゼリー質がなめらかに舌の上を滑る。
味わいは、まず甘みが先に立つ。砂糖のような甘さではなく、自然な果実の甘み。その後を追うように、程よい酸味がやってくる。この酸味が甘みを引き立て、口の中で絶妙なバランスを保つ。後味には、ほのかな旨みが残り、もう一口食べたくなる魔力がある。
オリーブオイルをひとたらし、粗塩をパラリと振りかけただけのシンプルなサラダにすると、トマト本来の味わいがさらに際立つ。オイルの香りと塩気が、トマトの甘みと酸味を包み込み、一体となって口の中で踊る。
思えば、祖母の家の庭にあったトマトも、こんな味がした。夏休みの朝、まだ露が残る葉をかき分けて、真っ赤に熟したトマトをもぎ取る。庭の水道で冷やして、そのままかぶりつく。あの頃の記憶が、このトマトの味と重なり合う。
良い食材は、多くを語らなくても心を満たしてくれる。このトマトは、まさにそんな一品だった。
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