冬の朝、駅前の商店街に漂う甘い香りに導かれて、小さな和菓子店の暖簾をくぐった。店主が勧めてくれたのは、この季節限定の「柚子餡どら焼き」だ。
手のひらに乗せると、ふんわりとした生地の温もりが伝わってくる。表面はきつね色に焼き上げられ、縁には職人技が光る細かな気泡の跡。そっと鼻を近づけると、ほんのり香ばしい生地の奥から、爽やかな柚子の香りが立ち上る。
ひと口頬張ると、まず カステラのようなしっとりモチモチの生地 が舌を包む。噛むごとにほろりと崩れる優しい甘さ。そして、その奥に待ち構えているのが、柚子の皮を練り込んだ白餡だ。舌先に触れた瞬間、ピリッと鮮烈な柚子の風味 が口いっぱいに広がる。甘さ控えめの白餡が、柚子の酸味と苦味を絶妙に引き立てている。
「今朝炊いた餡なんですよ」と店主が微笑む。確かに、この みずみずしさ は作りたてでなければ出せない。冷めた指先が温かくなるような、心までほっこりする味わいだ。
外は底冷えする真冬でも、このどら焼きひとつで春の訪れを感じられる。柚子の香りが鼻に抜けるたび、祖母の家で飲んだ柚子茶の記憶が蘇る。食べ物が紡ぐ季節の物語、それを大切にする職人の技が、このひと品に凝縮されている。
熱いほうじ茶と一緒にゆっくり味わう。最後のひと口まで、柚子の余韻が残り続ける。こんな丁寧な和菓子に出会えた朝は、きっと良い一日になる予感がする。
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