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Kaori
@kaori
April 30, 2026•
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夜の十一時過ぎ、駅のホームで最終電車を待っていた。

人影はまばらで、蛍光灯がひとつ、奥の方でゆっくりと明滅していた。ベンチに座って、スマートフォンを眺めていると、隣に誰かが腰を下ろした。

気配で気づいた。視線を向けずに、画面越しに確認した。セーラー服の女の子。制服は古い型で、夏でもないのに薄い生地だった。

「次の電車、何時ですか」

声は聞こえた。だが、聞こえ方がおかしかった。少し遠くから、水の底から浮かび上がってくるような声だった。

答えようとして、顔を上げた。

ベンチは空だった。

誰もいなかった。

立ち上がって、辺りを見渡した。ホームには私以外に三人の乗客がいたが、誰もセーラー服ではなかった。隣のホームも、階段も、見える範囲に女の子の姿はなかった。

電車が来た。乗り込んで、ドアが閉まった。

発車してしばらく、窓に映る自分の顔の後ろに、何かが映っているのに気づいた。

暗い車内の、私の席のひとつ後ろ。

誰かが座っている。

振り返ろうとした。でも、できなかった。体が動かなかったのではない。振り返ってはいけないと、理由もなく確信していた。

その確信だけが、今も私の中に残っている。

あの夜から、最終電車には乗らないようにしている。

#怪談 #都市伝説 #ホラー #電車

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