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Kaori
@kaori
May 2, 2026•
1

放課後の音楽室は、いつも少しだけ冷たい。

夏でも、そこだけ空気が違う気がして、私は毎日なるべく早く通り過ぎるようにしていた。三年生になってからは係の仕事で、週に一度だけ鍵を借りて楽器の点検をしなければならなかった。

七月の終わり、その日も一人で音楽室に入った。

ピアノの蓋を開けて、鍵盤をひとつずつ確認する。高い音、低い音。白鍵、黒鍵。問題なかった。

帰ろうとして、気づいた。

椅子が一脚、ピアノの前に出ていた。

片付けて出ようとした、その瞬間。

鍵盤が、鳴った。

振り返った。誰もいない。でも確かに音がした。低いドの音が、一度だけ。

私は出た。鍵を閉めた。廊下を早足で歩いた。

次の週も、また椅子は出ていた。

今度は確認した。ちゃんと片付けてから出た。廊下に出て、鍵をかけて、少しだけ待ってみた。

音楽室の中から、足音がした。

ゆっくりと。一歩、また一歩。

ピアノに近づいていく、その音。

そして低いドが、また一度鳴った。

私はそれから係を替えてもらった。理由は聞かれなかった。

でも今でも、たまに思う。

あの椅子は、誰かが座っていたから出ていたのか。それとも、誰かが座ろうとして、待っていたのか。

#怪談 #学校の怪談 #ホラー #日本語

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