今日のターゲットは、阿佐ヶ谷から桃園川の暗渠を辿って高円寺まで歩くことだった。地図上の距離は六キロ弱で、「軽い午前中の散歩」のつもりで阿佐ヶ谷駅に降り立った。改札を出た瞬間、なぜか北口に立っていた。南...
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今日のターゲットは、阿佐ヶ谷から桃園川の暗渠を辿って高円寺まで歩くことだった。地図上の距離は六キロ弱で、「軽い午前中の散歩」のつもりで阿佐ヶ谷駅に降り立った。改札を出た瞬間、なぜか北口に立っていた。南...
西荻窪を起点にしたのは、荻窪との境がよくわからないからだ。毎回「あれ、もう荻窪か」とスマホを確認するはめになる。実際、地名の境界線がどこにあるのか、長く住んでいる人でも説明できないんじゃないかと思う。...
水曜日なのに有給を取った。理由は特にない。強いて言えば、先週からずっと気になっていた暗渠を歩きたかった、それだけだ。蛇崩川の跡を池尻大橋から三軒茶屋まで歩く計画を立てた。「計画を立てた」というほどのも...
今日は五反田駅の南口を出て歩き始めた。目的地は特にないといえばないのだが、品川用水の暗渠跡を荏原町から戸越公園のあたりまでたどってみよう、というのを一応の目標にしていた。九月の日曜日で、まだ蒸し暑かっ...
先週の土曜日、明大前を出発したのは午前九時半ごろだった。北沢川の暗渠跡をたどって三軒茶屋まで歩くつもりで、前日に地図も確認しておいた。確認しておいたのに、甲州街道を渡ってすぐ地図を開いたら、スマホの画...
朝、いつもと違う駅で降りてみた。何となく地図を眺めていたら「神田川沿い」という文字が目に入って、突然歩いてみたくなったのだ。駅を出ると、予想より冷たい風が頬を撫でる。ああ、まだ3月上旬だったと思い出す。コートのボタンを一つ多く留めて、川沿いの道を探す。
商店街を抜けると、急に視界が開けた。川面がキラキラと光っている。橋のたもとで、小さな猫が石段に座ってこちらを見ていた。近づくと逃げるかと思ったけれど、じっと動かない。「おはよう」と小声で話しかけると、猫はゆっくりと瞬きを返した。それだけで、何だか許可をもらえた気がした。スマホを取り出して一枚写真を撮ろうとしたら、その瞬間、猫はすたすたと路地の奥へ消えていった。タイミングというのは、いつも向こうが握っているものだ。
川沿いを歩き始めると、桜の木が並んでいることに気づいた。まだ蕾は硬そうだけれど、枝先には小さな膨らみがある。あと二週間もすれば、この道は桜のトンネルになるんだろう。今はまだ、期待と準備の時間。隣を通りすぎた老夫婦が「もうすぐだねえ」と言いながら空を見上げていた。同じことを考えている人がいると分かると、街がもう少し優しく感じられる。
ベンチに座って持ってきたコーヒーを飲んでいると、ランニング中の人が次々と通り過ぎていく。ある人はイヤホンをつけて、ある人は犬と一緒に、ある人は息を整えながら。みんな同じ川沿いの道を走っているのに、それぞれの景色は違うんだろうな、と思う。私はといえば、ただぼんやりと水面を眺めている。鴨が一羽、流れに逆らって泳いでいた。けっこう必死に見えるのに、前に進む速度は恐ろしく遅い。でも諦めない。そういうところ、少し見習いたい。
帰り道、小さな古本屋を見つけた。店先に「旅の本コーナー」とあって、つい立ち寄る。埃っぽい匂いと紙の匂いが混ざった、古本屋特有の空気。棚を眺めていると、30年前の東南アジアの旅行記が目に留まった。パラパラとめくると、写真がモノクロで、今とは全く違う風景が広がっている。でも読んでいると、旅先で感じる「ちょっと迷ってる感じ」は、今も昔も変わらないんだなと気づく。結局その本を買って、店主のおじさんに「良い本ですよ」と言われた。本当にそうだと思う。
知らない街を歩くのは楽しいけれど、知らない道を歩くだけでも、いつもの街が少し新しく見えることがある。明日はまたいつもの通勤路に戻るけれど、きっと今日の散歩の余韻が少し残っているはずだ。次はどの駅で降りてみようか。地図を開くのが、少し楽しみになってきた。
#街歩き #都市散策 #川沿い #日常の発見 #旅の本